出版社内容情報
不変なものとして認識されがちだが、じつは歴史や社会、文化、伝統の影響を受けて、身体の深層で絶えず更新されつづける感覚。転換期の近代に剥き出しになった感覚変容の様相を、「近代医療」「身体美」「視覚」「身体化」「こころ」の五つの座標でとらえる。
"はじめに 栗山茂久/北澤一利
第1部 苦痛の伝統と近代医療
第1章 戦前期東京における病気と身体経験――「滝野川区健康調査」(昭和十三年)を手がかりに 鈴木晃仁
1 生理的身体・身体観・身体経験
2 民間療法と信仰療法
3 買薬
4 病気の閾値
5 まとめにかえて
第2章 冷え性の発見 白杉悦雄
1 一九五六年
2 病気のなかの日陰者
3 冷え性の西洋医学的研究事始め
4 医学の新しい考え方
5 木下杢太郎のエピソード
6 女性の血の道
7 冷え性・冷え症・冷え
8 冷え性の現在
9 おわりに――冷え性の身体感覚
第3章 頭痛の誕生と腹痛の変容 酒井シヅ
1 五臓六腑説の身体観から西洋医学へ
2 首・頭・脳
3 心と腹
4 頭痛・腹痛にみる身体感覚
5 売薬と病名の変化
6 むすび
第2部 身体の美をきそう論理
第4章 「黄色人種」という運命の超克――近代日本エリート層の""肌色""をめぐる人種的ジレンマの系譜 眞嶋亜有
1 はじめに
2 「黄色」という肌色をめぐる諸相――二十世紀初頭を中心に
3 おわりにかえて
第5章 「女学雑誌」にみる明治期「理想佳人」像をめぐって 鈴木則子
1 はじめに――懸賞答文「理想佳人」
2 婦人改良論のなかの体育と衛生
3 美容の奨励
4 おわりに
第3部 視覚が芽生えた近代
第6章 眼で食べるお弁当 尾鍋智子
1 お弁当づくりなんか大嫌い!
2 バランスの伝統――二十世紀初頭
3 口の優位――二十世紀前半
4 眼の優位――高度経済成長期(一九五〇年代半ばから七〇年代初頭)
5 色の優位――一九七〇年―九〇年代
6 愛情の宿題
7 むすび
第7章 動く襖絵――日本の伝統的空間認識 山田憲政
1 問題提起
2 日本画の絵画空間の特質
3 日本の絵画空間で俯瞰法が発展した理由
4 襖絵の絵画空間
5 まとめ――動く襖絵と応挙の襖絵を貫く共通の基盤、そして日本の遠近法
第4部 近代社会の身体化と抵抗
第8章 過労死、また過労史について 西本郁―「精神病者」としての鬱病者
5 神経衰弱の台頭――「気の身体」から「神経の身体」へ
6 まとめにかえて――医学言説と経験言説の拮抗
第12章 ストレスの謎と刺激革命 栗山茂久
1 ストレスの謎
2 緊張と存在
3 弛緩の再評価
4 刺激革命
5 ストレスの苦痛
6 むすび"
内容説明
社会や文化の影響を受けて、身体の深層で絶えず更新されつづける感覚。転換期の近代日本に剥き出しになる感覚変容の様相を、「近代医療」「身体美」「視覚」「身体化」「こころ」の五つの座標で捉える。
目次
第1部 苦痛の伝統と近代医療(戦前期東京における病気と身体経験―「滝野川区健康調査」(昭和十三年)を手がかりに
冷え性の発見
頭痛の誕生と腹痛の変容)
第2部 身体の美をきそう論理(「黄色人種」という運命の超克―近代日本エリート層の“肌色”をめぐる人種的ジレンマの系譜;「女学雑誌」にみる明治期「理想佳人」像をめぐって)
第3部 視覚が芽生えた近代(眼で食べるお弁当;動く襖絵―日本の伝統的空間認識)
第4部 近代社会の身体化と抵抗(過労死、または過労史について;栄養ドリンクと日本人の心;〈人間化〉から〈動物化へ〉―舞踏家・土方巽の〈肉体の叛乱〉)
第5部 こころの重さの伝統(鬱の病;ストレスの謎と刺激革命)
著者等紹介
栗山茂久[クリヤマシゲヒサ]
1954年生まれ。国際日本文化研究センター教授。専攻は比較医学史
北沢一利[キタザワカズトシ]
1963年生まれ。北海道教育大学釧路校助教授、国際日本文化研究センター客員助教授併任。専攻は健康管理政策論
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