出版社内容情報
国家意志としての軍隊の命令に「否」を突きつける兵役拒否とは何か。敵を殺す暴力性の極限に個人として対抗する良心的兵役拒否が人権として合法的に認められているドイツをはじめ、イタリアやイギリスの実態、日本の徴兵拒否をも含めて詳細に解析する。
はじめに 佐々木陽子
第1章 良心的兵役拒否を考える 笠原芳光
1 『俘虜記』の問題
2 兵役拒否者の苦悩
3 さまざまな兵役拒否者
4 北御門二郎の場合
5 イシガオサムの場合
第2章 徴兵制と良心的兵役拒否――ドイツの場合 フォルカー・フールト/田中美由紀訳
1 徴兵制と兵役拒否権
2 良心的兵役拒否の認定制度
3 社会奉仕
4 徴兵制は廃止に向かうのか?
第3章 東ドイツの兵役拒否――その原理と社会的展開 市川ひろみ
1 キリスト教会の兵役拒否への対応
2 東ドイツの兵役
3 東ドイツの兵役拒否者
4 兵役拒否の社会的展開
第4章 従軍兵士の良心的兵役拒否――アメリカ法の場合 原野 翹
1 本章の目的
2 良心的兵役拒否者の範囲
3 軍隊での良心的兵役拒否の認定手続
4 認定申請拒否決定と司法審査
5 若干の総括
第5章 第一次大戦期イギリスの良心的兵役拒否者――国民代表法における選挙権剥奪条項を中心に 渡辺 知
1 良心的理由による兵役免除について
2 良心的兵役拒否者
内容説明
近代軍隊制度の成立以来、個人の領域にあるべき「死」を国民の義務として強要する兵役に対して、その暴力性に抗する、命令への不服従という実践としておこなわれてきた兵役拒否とはなにか。「死にたくない」という人間の原始的感情を「私情」へと転換する戦場でなされる、国家の意志に対抗する批判的なメッセージとしての兵役拒否。宗教に裏づけられた良心的兵役拒否だけでなく、生への執着や恐怖などからなされる自傷行為、失踪、逃亡などの兵役忌避までをその対象として捉えて、個人と国家との緊張関係の極限に生じる矛盾と葛藤を浮き彫りにする。人の精神の強靱と脆さをともに抱える抵抗としての兵役拒否を、世界的な視野で論理的・歴史的に検証する論考集。
目次
第1章 良心的兵役拒否を考える
第2章 徴兵制と良心的兵役拒否―ドイツの場合
第3章 東ドイツの兵役拒否―その原理と社会的展開
第4章 従軍兵士の良心的兵役拒否―アメリカ法の場合
第5章 第一次大戦期イギリスの良心的兵役拒否者―国民代表法における選挙権剥奪条項を中心に
第6章 近代イタリアの国民形成と徴兵制度
第7章 日本の徴兵忌避―生命への執着をめぐる葛藤
著者等紹介
佐々木陽子[ササキヨウコ]
1952年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程。国立看護大学校非常勤講師
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