内容説明
1972年、性の思想を問う日活ポルノ裁判。日活ロマンポルノは国家を嫉妬させたのか?猥褻とは、映画とは、何か?孤高の監督が遺したインタビューから、70年代の秘められた映画史に迫る!「ワイセツ講座」ここに開講。
目次
はじめに 性の思想と性的映画の時代―国家を嫉妬させる映画
インタビュー 山口清一郎の軌跡(神代辰巳の死;大島渚と丸山眞男 ほか)
検証 日活ロマンポルノ異聞(「愛と希望の街」の彼方に;日活ヌーヴェル・ヴァーグ ほか)
採録 「ワイセツ講座」(「ワイセツ講座講演」について;山口清一郎講演「日活ポルノ裁判を越えて」)
「その後の山口清一郎」(布村建さんに聞く)
著者等紹介
鈴木義昭[スズキヨシアキ]
1957年、東京都台東区生まれ。竹中労に師事。ルポライター、映画史研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
n75
1
日活ロマンポルノは日活の斜陽期、会社再建のため手段を選ばずとにかく映画を作り続けるんだという背水の陣の中、みんなが一蓮托生で作り上げた名作の文化だと思っていたが、この本で日活の創成期から猥褻裁判に至るまでの運営状態を知り、スタッフたちがロマンポルノを語る時に、日活それ自体にはあまり言及しない理由がわかった気がした。あの頃は、作り手と観客の間に共同幻想が確かに存在した、撮影所は魔窟だと語る山口清一郎の数奇な運命と、狂気を内包することで死んで生まれ変わった日活の歴史を読み解く一冊。2015/10/08
まさやん80
0
初監督作品が警察から摘発を受けた山口清一郎監督。結局、その摘発(ロマンポルノ事件)に関わったことで、映画作品は3本に留まってしまった悲運の人でもある。彼へのインタビューを軸に、国家が規定した「わいせつ」という概念に対する不毛の議論を垣間見せる。それにしても、裁判の初めから、起訴した時点でこれは国家が勝利しているのだ、という山口の洞察は鋭い。もっと映画を撮るべき監督さんだった。2017/09/11