内容説明
生きた幻影の街が詩人を変える。インドへの旅から生まれた28篇。「私」への容赦ない視線が裸の存在に突きぬける。
目次
雨と木の葉
バルバザール・朝
泥
オヤカタ
怒る女
お前さん
木陰
米
切断
おぺろい・ぐらんど
植物園
刃
遺品ビーズ
決心
出稼ぎ宿
リクシャー―コルカタの街には人力車が走っている
天才
はいどろふぉびあ
神の乗り物
鈴木さんの鈴
桜を見に
老処女
フーグリー河
ヘッドライト
風
ワタシは銭
朝五時に
最後の詩
コルカタ幻影〔ほか〕
著者等紹介
小池昌代[コイケマサヨ]
1959年東京生まれ。詩集に『ババ、バサラ、サラバ』(小野十三郎賞)、『もっとも官能的な部屋』(高見順賞)、『永遠に来ないバス』(現代詩花椿賞)など。小説『タタド』(表題作で川端康成賞)、エッセイ『屋上の誘惑』(講談社エッセイ賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
23
「今まで持っていた何かを失い,代わりに何かを得た。何が変わったのかわからないが,確実に自分の一部分が変わった。」そんなコルカタへの旅から生まれた詩集。人の熱,息遣い,視線,ネズミに乗る巨象の神,夫を踏みつける怒りの女神,清濁を併せのむ濁った河。熱気と静寂,混とんと調和,光と闇。皮膚感覚のように伝わってくる何か。そして,もう一つ瞠目するのは,この詩集誕生の背景。渋谷の書店で開催したフェアにあわせ,1か月間,毎日,その日書いた詩を書店に掲示したという。人が詩を書くという営みの不思議さ。2018/09/26
mm
15
装丁の赤の色相が、わたしのコルカタイメージにピッタシなので、読む。私にとってのコルカタはジュンパラヒリの小説エピソードと、少々の地歴の知識くらいで合成された吹けば飛ぶ様なものなんだけど。この詩集はまるで写真集を見る様にダイレクトに響く。言葉にも力があるんだけど、その向こうの事実というか現実がデカイ。この詩たちは、紀伊国屋イベントに合わせて、毎日ひとつづつ書かれて発表されたものからの抜粋という、成り立ちも興味深かった。2015/10/21
tom
11
小池さんの書く小説や詩は、私にとっては、好みの範疇に属してます。この詩集は、インドのコルタカというところに行き、帰国してから、書店で毎日体験詩を書くというイベントで作成した詩を集めたものらしい。でも、この詩集は、彼女がこれまでに書いてきた詩とはちょっと違う感じがする。よく分からないけれど、言葉の質が違っているような。残念ながら、読んでいて、言葉のなかに入っていけない。残念本の一冊で終わってしまった。2015/10/17
花きちがい
2
詩は分からない。現代詩はもっと分からない。この人の詩は読んだこともない。そんな状態で友人から一度借り、その時はふむと思って返したが、頭のどこかにずっと引っかかっていた。その後この詩人の朗読を聴く機会があってから、この詩集が以前より馴染む体になったのを感じていた。コルカタの熱気、匂い、密度、汚さ、乾いた感じと湿った感じ、それらが畳み掛けるように繰り返される言葉、というよりは音によって生々しさそのものとでも言えそうにあらわになる。2011/09/18
savasava
1
詩とは、うまく言えないことを的確に言葉で表すことだと思っていたが、もっと時間軸や対象が揺らいでもいいのだ、境界線はあってなきがごとしでも成立するのだと、教えてもらったよう。2014/09/02