内容説明
ここには精神の音楽と、顕在的潜在的な響きが織りなす音楽、用語の喚起と反覆の探索の果てに到達した思想がある。本を閉じ、蝋燭を消し、孤立した峻厳な姿勢でイジチュールは生涯を終える。無も去り、純潔の「城」が残る。厳密すぎる散文で書かれた未完の狂気の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たーぼー
53
イジチュールが煽った毒の味は如何ほどのものだったのだろうか。死の間際に、人は夢の譫妄状態に見舞われる。やがて凍りつくような凝結が起こり、さいごに静寂の闇が訪れる。此処にマラルメは不治の情熱を与えたからこそ、本作は隠され、完成をみなかったと私は邪推する。『純潔な城』の中に自らを閉じ込め王となり、いずれ後の世の無責任な解釈に晒されることを思い愉しみながら、創られた秘義的事項の範例の詩は狂気に満ち溢れる。そして、これは文字より先に消滅する肉体など、狂気を内在させるための便宜的な借り物という表明の書でもある。2017/04/12
パラ野
14
エプシロンが小文字なのが、何の意味があるのか、誤植なのか、気になる。生前に発表されなかった若い時の習作。もうちょっと辞書をひくようにしようと思った。装丁がすごくカッコいいのね。2015/01/04
月
10
真夜(真夜中)、無(rien)の存在以外なにものも存在しない純粋な現存の喚起。家具に重く闇がのしかかりまったく闇にとり戻された空虚な部屋。死によって作り出される深淵の孤独や消滅の深み。そして先行的出現としての永遠のイマージュ。イジチュールは未完(生前未発表)の作品であり、マラルメ自身もその出版を望んではいなかったと思われるが、今も「骰子一擲」と比較される重要な作品でもある。 「無も去り、純潔の城が残る。」 マラルメの夜は、その詩篇の源泉でもある。 2016/03/23
uni
3
こんなに意味不明な文章読んだの久しぶり。なにこれ、散文?構想メモ?未完の作品で、断片的な文章なのですが、うーん、読む人によって色んな解釈できると思いますが、つまり大幅に噛み砕きますと、イジチュールとゆー男の狂った精神状態のお話?で、彼の精神がどこか城のような硝子壜の中に閉じ込められてて、夜中の12時になると階段を降り、ラストは。。。。!みたいな話?噛み砕きすぎ?薄暗い文章ですが、世界観は素敵。2013/07/27
茅野
0
題の Folie は「狂気(精神錯乱)」というより、「常軌を逸した(意図的な行為)」というイメージかな。2020/11/26