内容説明
すべての人がそれぞれ特別の詩人である―。「思想の科学」を創刊し、戦後日本に新たな思想の潮流を導いた哲学の核にあった詩への希求。代表的な詩と詩論を集成し、その詩心のありかをはじめて本格的に説き明かす。
目次
1 詩人論(詩について;「荒地」の視点;田木繁について;彼 ほか)
2 詩篇(KAKI NO KI;YUKAI NA ASA;自由はゆっくりと来る;ある日 ほか)
著者等紹介
鶴見俊輔[ツルミシュンスケ]
1922年東京生まれ。39年ハーバード大学留学後、帰国。46年丸山真男らと「思想の科学」創刊。日常に根ざした自由で柔らかな思想を戦後日本にもたらす。ベ平連や九条の会の活動はもとより、サブカルチャーにも早くから注目する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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厩戸皇子そっくりおじさん・寺
92
ワガママな事を言うが、この本は本当にいい本なので、みんなに読んで欲しい。他の方のレビューにもあるが、私も泣きそうになった。エッセイ的な詩論や詩人(歌人含む)論に、鶴見さんの詩がいくらか付いている本だが、どれもこれも、まっすぐに人間と世界の幸せを願っていた人の言葉だなぁと思う。この本で知った宮柊二という人とその短歌。私が無知なだけで、宮柊二は岩波文庫から歌集が出ているすごい人なのだが、本書で鶴見さんが評する「自分は人を殺した、しかし戦争は良くない」という主張の尊さ。改心した人を侮るのは野暮だよね。2020/09/18
justdon'taskmewhatitwas
4
おそらく2000年頃の『潮』の連載をまとめる為、過去に執筆された人物記などを昭和3、40年代にまで溯って収録編纂した本(設計:齋藤愼爾)だが、説明や注釈もないまま追想・回想も含んで時空が歪むがまま無骨に語られる。ただ全体を通して漂っているのは、言葉というか文学が人生に密接し有効だった時代の気配だ。読書を趣味ですと答えたらどやされそうな時代・・・。いや現代でも人の生死に関わる言葉を"詩"というのかもしれないが、不勉強で判らない。2024/01/22
ちあき
4
鶴見俊輔の詩人論、そして本人の詩作品が読めるというめずらしい一冊。すなおにいい本だと思った。論理を感情に、知識を生活にぐっと引きよせて語るスタイルが生きている。さほど有名でない、ほとんど市井の人に近い詩人について語っている文章ほど訴えてくるものがあった。2010/08/18
hf
3
最後の「おぼえがき」で、”陸軍より海軍のほうが文明的かと思い、海軍のドイツ語通訳(軍属)となってジャワに送られた。オーストラリアと対峙するそこで、私は、太平洋各地の海軍基地で用いる擬装用植物の種目をあげた小冊子を、植物学者の助けを得て、つくった。これが私の最初の著作であり、詩である。”とあり、鶴見俊輔も(林芙美子と同じく)ジャワにいたのかと。「黒田三郎」の項を見返すと、”戦争中のジャワで黒田三郎に会ったら、彼をたよって、「荒地」にいれてもらっただろう。”と書いてあり、黒田もそうだった2022/10/29
TOMYTOMY
3
まさしく詩と自由。また読みたい詩が増えました。 歴史とともにある詩。詩は人を表す。2018/03/24