内容説明
「全世界を凍らせる」かもしれない「ほんとのこと」を言うのが詩の本質だと著者は説く。詩の精神の普遍的原型と自らの「詩を書き続ける場所」を問う原理論8篇。単行本初収録「詩魂の起源」「詩人論序説」を含む。
目次
詩とはなにか
現代詩のむつかしさ
音韻と韻律―詩人論序説2
喩法論―詩人論序説3
なぜ書くか
言葉の根源について
詩魂の起源
詩について
解説 “なぜ書くか”―鳴動しつづける表現論(添田馨)
吉本隆明詩論ガイド―読書案内
著者等紹介
吉本隆明[ヨシモトタカアキ]
1924年東京生まれ。52年詩集『固有時との対話』、53年『転位のための十篇』を発表、詩人として出発。61年「試行」創刊。『言語にとって美とはなにか』『共同幻想論』『心的現象論』『ハイ・イメージ論』『母型論』など膨大な著作があり、同時代に多大な影響を与える。文学論、政治思想をはじめ、古典論、宗教論、映像論、南島論へと豊饒な拡がりを見せる戦後最大の思想家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mstr_kk
14
ひとりの詩人の意識が詩を生む瞬間と、古代の人間が詩を生んだ瞬間を重ね、歴史の積み重なりの中での言葉の変化を論じた、論考と講演録。もう1冊の『言語にとって美とはなにか』と呼ぶべきものであり、『言語美』の難解箇所を理解するのにも非常に役立ちます。吉本隆明の思想はまさに詩を考えるところから生まれたんだなあと、大きな感銘を受けました。非常に難しいところも多いですが、洞察の深さに圧倒されます。「なぜ書くか」はわかりやすく感動的な、根源的文学論。吉本を理解する上で欠かせない1冊だと思います。2017/04/04
ndj.
10
「詩とはなにか」(1961)「なぜ書くか」(1966)「言葉の根源について」(1971)など、詩について触れた文章を中心に、寄せ集めてきた感じ。「そしてわたしたちの詩が他人に読まれたとき、詩の意味や主題やモチーフがまるで通じないとしても、この放出した感じだけは伝わるはずだという希望をいだくのである」、難解と言われる現代詩、ほとんどシュールレアリスムであるような詩、あるいは単なる叫び、であっても、この「放出」に己のどこかが反応すれば、それはわたしにとって、かけがえのない「詩」になるのである。2016/03/31
kenitirokikuti
7
図書館にて。「音韻と韻律 詩人論序説2」(「現代詩手帖」1960年1月号)〈現代詩は、昭和の初年から、日本語の意味と形象的な感覚との統一をもとめる表現にすすんできたため、音韻または韻律との意味との関係について、ほとんど意識的な追求はおこなわれなかった。〉加藤祥造「沙市夕景」から。〈そりゃその通りだ、黒は黒(略)髪の感触も顔の形も身体の格好も変わってるところは変わってるさ/でもね、デイブ〉。引用は韻律がんばっててラップっぽいが、実験的であり、〈 詩の本質にまで及ぶ効果をもちえない〉。2020/10/13
ヴェルナーの日記
3
日本における近代思想家・文芸批評家でも屈指とされる本著作者・吉本隆明氏の数多い論考の中からチョイスされている一冊。 実は吉本氏は、思考論は個人的にあまり好きではないのだが(文芸評論家の多くは悲観主義的な色合いが濃いため)、近代日本の文学、特に詩学における論考は、文学を学ぶ者にとって決して避けて通ることができない山である。 彼の著作は、全般的に独自の思考法により難解なものが多いのだが、本作は比較的に簡明な著述なものを掲載されており吉本氏の入門としては必読の書ではないだろうか。2012/12/31
hirom
2
図書館で偶然見つけて借りた。懐かしい吉本節。『言語にとって美とはなにか』に結実する言語の分析が現代詩を中心題材として語られている。日本語の指示性と表出性の独自の考察、言葉によって美を生み出す譬喩についての洞察に説得力がある。色々な所に書いたり講演したりした詩についてのアンソロジーである。2017/06/20