出版社内容情報
山崎ナオコーラ[ヤマザキナオコーラ]
著・文・その他
内容説明
“恋愛は苦手だけど、恋愛小説は好き”なあなたに贈る、心に柔らかい刺を残す連作短編小説集。人気多肉植物店「叢」のサボテン×山崎ナオコーラのラブストーリー。
著者等紹介
山崎ナオコーラ[ヤマザキナオコーラ]
1978年生まれ。2004年、「人のセックスを笑うな」が第41回文藝賞受賞作となり、以降、作家として活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
156
夢を、見ることはできる。たとえ現実の中にいましても。甘やかだったり、切なかったり、そういう「夢」の部分だけを切り取るから、ラブソングも恋愛小説も素敵になるのだ。でもナオコーラは、そんな夢を見事にぶち壊してくれる。甘い描写も切ない描写もなく、現実と地続きの夢というもの、言い換えると「恋」ってやつを描いている。たん、たん、たん、と、ロマンチックの欠片もなく、現実と地続きの恋を描いてる。恋の現実をここまでバッサリ書いてくれると、逆に清々しい。恋に不可欠な花よりサボテンであることが、この連作短篇集には似合ってる。2016/07/07
なゆ
120
恋の多様性って感じの連作短編集なのだけど、主役はサボテンのようにも思えてしまう。出てくる恋は少々ほろ苦いのが多くて、それぞれの話に面白いサボテンが出てくる。その写真と解説も見れるというところがいい。個性的でいびつな恋とサボテン、その組み合わせにもセンスを感じる。この表紙の写真だけでも、なんと見ごたえのあることか。とにかくサボテンの奥深さに圧倒されてしまった。鳥子さんの片想いの話が一番好きで、鳥子さん達三人の暮らしの様子がもっと読みたかったかな。松田聖子に恋する話もよかった。『制服』は名曲よね。2015/06/20
ALATA
111
初読み作家さん。三家族の三セットの変則的恋愛?短編集にいろんなサボテンが絡む面白い構成の読み物でした。野球選手の妻になるために目玉焼き作りに頑張る伽奈、魔法の箱で松田聖子のキャンデイボイスに入れ込む勇魚の話が好み。「他の女の子と付き合わないで」「私のことを好き?」さよならを言ったことがない入鹿はある意味恋愛に向かない直ぐな人だな。生きていく上で様々な恋愛観、ドラマが淡々と語られ味わい深い★4※卒業式の一瞬を完璧に切り取り「決して歌い上げる系でなくものすごく歌が上手い」ナオコーラさんの「制服」の解説が秀逸。2022/11/19
ナマアタタカイカタタタキキ
111
少し変わった形の恋愛のアソートといったところ。各々の話に特徴的なサボテンが添えられていて、これらから着想を得て筆を執ったのかもしれない。どの話も恋愛の特に甘酸っぱい部分を描いていて、全てがハッピー一色ではないけれど、熱烈な感情や生々しさはなく、それこそお茶の時間に色とりどりのお菓子を一粒一粒ゆっくり味わうようなゆとりが持てる一冊。個人的には、アイドルと付き人の話が、同性愛という設定に依拠して少し薄味に感じたからか、その後の俊輔の話がより印象的。恋の中で自分の気持ちに自信が持てなくなった時、読むといいかも。2020/05/09
ユザキ部長
96
恋の種類。男女が対になるだけが恋ではない。振られたって、想いを伝えられない片想いだって恋。同性に恋をする人もいれば何人もの人を恋する人だっている。言葉も体も交わさない恋もある。絶対はない。ひとりひとりの個人的な恋しかない。2018/07/21