出版社内容情報
キュルケゴール[キュルケゴール]
著・文・その他
内容説明
絶望とは、人間の精神のみが患う病である。時は19世紀のヨーロッパ。社会や個人への不安を抱え、自己疎外に陥った人々の魂の救済、精神の教化と覚醒のため、哲学者キェルケゴールの探求が始まる―。21世紀、今も私たちをとらえて離さない「死に至る病」を、現代の視点から綴ったオリジナルストーリーと絡めて漫画化。
著者等紹介
キェルケゴール[キェルケゴール]
1813~1855。宗教思想家・哲学者。デンマークのコペンハーゲンに生まれる。大学では神学を学び、やがて文学や哲学に傾倒する。婚約破棄の体験が起因となり、実存・主体・自己を探求した多くの著作を遺す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鱒子
69
Kindle 難解と言われる「死に至る病」(人生と絶望についての思想書)を漫画で解説。キルケゴールの思想の基となったヘーゲルの弁証法についても書いてあります。弁証法、初めて理解できました、すごく分かりやすかった。原書はキリスト教信仰が根幹らしいのですが、それを理解し難い現代日本人に向けにアレンジされています。良書2022/01/03
北杜夫そっくりおじさん・寺
43
近頃このシリーズばかり読んでいて、自分でも食傷気味なのだが、これはその中でも読んで良かったと思う一冊。漫画の設定は現代の悩める少年がライターの叔母にキェルケゴールを講義されるという学習漫画形式。キェルケゴールの伝記も描かれているが、興味深い人生である。ヘーゲル哲学の弁証法から始まり、キェルケゴールの『死に至る病』の哲学に至る。完全にマスターできた訳ではないが、キェルケゴール自身が考えて考えて考えて悩みや苦しみ悲しみを克服した人だとわかり、きちんと生きようという哲学だとわかった。読んで損なし。2015/02/25
maimai
35
死にいたる病「絶望」。本当の意味での絶望とは自分自身の自己を見失うことみたいです。自分がなりたいという自己を選択せずに生きることこそが絶望と説いています。死とは肉体ではなく精神によるもの、なりたい自分になろうとしない人は全員死んでいるみたいです。人が絶望から逃れるためには自分が好きな価値観を持つことが大切みたいです。好きなことからなりたい自分になっていく。自分を見失いそうになる時代の中で好きなことこそが自分を絶望から救うみたいです。自分にとって好きなことこそが自分を形づくるのですね笑 大切にせねば!2016/04/09
ミエル
27
原本を読んだのは思春期ど真ん中。背伸びして読んだな。年頃ならではの絶望と自己との対峙、実存主義にたいそう励まされたのを思い出す。で、本作はまるでエヴァンゲリオンのあの最終回のよう。おめでとう!の連呼が聞こえてきそうな結末、軽すぎるけどある意味わかりやすくて、これはこれで良いのでは?己の価値を探し自分を愛せば世界の見え方が変わる。良い教えだよね。2019/04/09
ルート
21
皆多かれ少なかれ自分自身に絶望を抱いている。キェルケゴールはそれを「死に至る病」と呼んだ。誰しも今の自分には満足していない。変わりたいという思いを持っている。テーゼはアンチテーゼを産み出すが、その2つが統合されたとき、どちらも含んだジンテーゼとなる。人は感性的に、刹那的に生きることもできるが、残るものは少ない。倫理的に生きることもできる。とはいえ、自分を見つめ続けるのは辛い。キェルケゴールの言う「死に至る病」は、自分が自分である責任を放棄してしまうこと。逆風の中でも、前を向いて歩き続けなければならない。2018/09/09