内容説明
四人の文学作品を通して、「ことばを生きる個人の倫理」と「ことばをあやつる国家の道徳」の相克を明らかにし、日本国憲法の意味を問う。
目次
第1章 樋口一葉―宣戦布告の詔勅と女の眼(なぜ“憲法と近代文学”なのか;前文に刻まれた主権者の歴史 ほか)
第2章 夏目漱石―二〇世紀文明と「個人の革命」(『草枕』と日露戦争;汽車という二〇世紀文明 ほか)
第3章 宮澤賢治―“正義の戦争”はあるのか(賢治の生きた時代;星空と人間 ほか)
第4章 大江健三郎―誰も責任を取らない国(「九条の会」のアピール;一九九三年の転換 ほか)
著者等紹介
小森陽一[コモリヨウイチ]
1953年東京生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。成城大学助教授を経て東京大学教授。専攻は日本近代文学。2004年6月に結成された「九条の会」事務局長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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寛生
54
【図書館】夜空で息をしながら輝く星のように、私たち人間も息を吐くことで熱を出し、その熱は永久に宇宙に存在し続ける光になると、小森は宮沢賢治の文学的想像力を用いながら魂を振り絞るようにして語りかける。本書から放たれる〈ことばの力〉は、小森の光熱となり、読者である僕の魂にも身体も変化を遂げさせられる。六九年目の終戦記念日を迎えた今、集団自衛権の閣議から住民を完全に無視した辺野古のボーリング調査開始下、民主主義がガタガタを崩れ落ちる騒音の中で、私たちの心身を鎮めさせ、ことばの力、勇気に満たしてくれる本。2014/08/16
mie
2
樋口一葉、夏目漱石、宮沢賢治など読みましたが、こうやってその書かれた時代背景に及んで読むことはしませんでした。こうしてその書かれた時代や憲法9条の観点から読んでみるとそうだったのかと今まで読んでいたのは筋を追っていただけなんだと思いました。漱石が徴兵を逃れるために北海道に籍を移した事も知りませんでした。憲法9条もじっくりと考えてみたいと思いました2013/05/30
あかり
1
対面音読した本/夏目漱石について知らなかったことがたくさん。とてもよく考える人だったんだな。日本の国についてもさまざまな考えを持っていたようだ。2007/02/14