響応する身体―スリランカの老人施設ヴァディヒティ・ニヴァーサの民族誌

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  • サイズ A5判/ページ数 390p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784779510199
  • NDC分類 369.26
  • Cコード C3039

出版社内容情報

他人でしかない人々の間に老病死を支える関係性は、いかに築かれているのか。スリランカの老人施設が投げかける問いとは何か

はじめに  フィールドとの出遭い  



序 論 ヴァディヒティ・ニヴァーサが投げかける問い

 一 ヴァディヒティ・ニヴァーサの社会的位置づけ  

 二 「施設における老い」への視角  

 三 他者の窮状や苦悩への応答性をめぐって  

 四 臨床現場における関係倫理と本書の視座  

 五 調査概要および本書の構成  



第?部

第一章 老親扶養をめぐる規範と実態

    ――シンハラ農村社会の家族と世代間関係から

 一 親子間の長期的互酬性  

 二 高地シンハラ農村における家族と老い

 三 K村における高齢者の生活と老親扶養  

 四 交渉される世代間関係  



第二章 シンハラ社会とモラトゥワ

    ――ヴァディヒティ・ニヴァーサをとりまく社会的・空間的文脈

 一 西南海岸の町、モラトゥワ  

 二 カトリックと仏教の相互浸透  

 三 シンハラ社会研究と関係構築の特質  



第?部 ダーナ実践がとりむすぶ社会関係



第三章 ヴァディヒティ・ニヴァーサの成立

    ――ダーナを通したチャリティの現地化

 一 植民地化と慈善事業の展開  

 二 新興富裕層の台頭と社会/慈善事業  

 三 ヴァディヒティ・ニヴァーサの創設期における二つの運営形態

   ――カトリック的なチャリティと「ミールス・カレンダー」  

 四 「近代性をめぐる実験」の産物 



第四章 ヴァディヒティ・ニヴァーサを支える社会関係

 一 「施設の社会化」という帰結  

 二 担い手の多様化  

 三 ダーナ施主とヴァディヒティ・ニヴァーサとの結びつき  

 四 「社会奉仕事業」と、そうでないもの  



第五章 揺らぐ「与え手/受け手」関係

    ――ダーナ実践における相互行為とその意味

 一 ヴァディヒティ・ニヴァーサでのダーナをどう捉えるか  

 二 ダーナ儀礼における与え手 - 受け手関係の揺らぎ  

 三 配慮の双方向性――与え手の生の偶発性が露わになるとき  

 四 ダーナ実践への多様な意味づけ  



第?部 施設における老いと死、看取り



第六章 「生活の場」としての施設

    ――MJSニヴァーサ概況

 一 MJSニヴァーサの人びと  

 二 MJSニヴァーサでの日常 

 三 生活の場であり、「慈善」「施設」でもあるということ  



第七章 ヴァディヒティ・ニヴァーサで生きるということ

    ――入居者たちの「人生の物語」と日常生活の記述から

 一 ライフ・ナラティブを聴くこと、記述すること  

 二 事例紹介  

 三 考察  ヴァディヒティ・ニヴァーサで生きるということ  



第八章 ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける死と看取り

 一 ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける看取りの実際  

 二 ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける死  

 三 看取り行為への意味づけ  フロアスタッフの語りから  

 四 偶有性への気づき  



結 論 ヴァディヒティ・ニヴァーサを支える関係性とその倫理

 一 ダーナをめぐる相互性  

 二 老病死をめぐる相互性  

 三 響応する身体が生み出す肯定的態度



補 論 スリランカにおける高齢者福祉の展開

 一 独立以降の社会保障・福祉サービスの充実化  

 二 高齢者福祉を取り巻く国際的状況と「高齢者福祉」の展開

中村 沙絵[ナカムラ サエ]
1983 年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の博士課程を修了。博士(地域研究)。現在,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科准教授。専攻は南アジア研究,文化人類学。主な著書・論文に,『スリランカを知るための58 章』(分担執筆,明石書店,2013),「現代スリランカの慈善型老人ホームとダーナ」『南アジア研究』no.23(2011): 100-120,「スリランカ・シンハラ社会における施設での看取りと死に関する一考察」『アジア・アフリカ地域研究』no.13-2(2014):174-211,ほか。

内容説明

他人でしかない人々の間に老病死を支える関係性は、いかに築かれているのか。少子高齢化の進むスリランカの老人施設が投げかける問いとは何か。よるべなき年長者たちが集う施設のエスノグラフィー。

目次

ヴァディヒティ・ニヴァーサが投げかける問い
第1部(老親扶養をめぐる規範と実態―シンハラ農村社会の家族と世代間関係から;シンハラ社会とモラトゥワ―ヴァディヒティ・ニヴァーサをとりまく社会的・空間的文脈)
第2部 ダーナ実践がとりむすぶ社会関係(ヴァディヒティ・ニヴァーサの成立―ダーナを通したチャリティの現地化;ヴァディヒティ・ニヴァーサを支える社会関係;揺らぐ「与え手/受け手」関係―ダーナ実践における相互行為とその意味)
第3部 施設における老いと死、看取り(「生活の場」としての施設―MJSニヴァーサ概況;ヴァディヒティ・ニヴァーサで生きるということ―入居者たちの「人生の物語」と日常生活の記述から;ヴァディヒティ・ニヴァーサにおける死と看取り)
ヴァディヒティ・ニヴァーサを支える関係性とその倫理
スリランカにおける高齢者福祉の展開

著者等紹介

中村沙絵[ナカムラサエ]
1983年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の博士課程を修了。博士(地域研究)。現在、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科准教授。専攻は南アジア研究、文化人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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