内容説明
失業と労働条件の不安定化がもたらす今日の社会的危機の根源は何か。賃金労働の軌跡を14世紀から捉え返し、社会的なものの成立過程とその危機を明らかにするロベール・カステルの主著、待望の完訳。
目次
第1部 後見から契約へ(近接性に基づく保護;土地に縛られた社会;名もなき賃金労働者;自由主義的近代)
第2部 契約から身分規定へ(国家なき政治;社会的所有;賃金労働社会;新たな社会問題)
結論 負の個人主義
著者等紹介
カステル,ロベール[カステル,ロベール][Castel,Robert]
1933年フランス、サン=ピエール=キルビニョン(現在のブレスト)生まれ。社会学者。リール大学を経て、ヴァンセンヌ実験センター(のちのパリ第8大学)などで教鞭を執る。現在、社会科学高等研究院(EHESS)教授。社会運動研究センター(CEMS)のメンバー
前川真行[マエガワマサユキ]
1967年生まれ。京都大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在、大阪府立大学地域連携機構生涯教育センター准教授。思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mealla0v0
3
賃労働の系譜学。前近代的共同体による保護と扶助の仕組み。これは近代化に伴う流動化のなかで再編されていくが、この過程で、社会的なものが賃労働を中心として形成された。自由主義的な、パターナリズム的な保護に始まり、次第に社会保険的、社会的所有としての保護へ。社会保険は連帯の技術だとされるが、その社会保険は賃労働による労働者の安定化によって軌道に乗る。社会的所有を制度化した社会国家は、明日をも知れぬ労働者に未来を保証する。ただし、福祉国家はその制度を通じて個人化へ跳ね返り、危機に瀕していくことになるが……2021/03/08
Cebecibaşı
0
社会における賃労働をめぐる社会問題に焦点を当て、その歴史的展開をフランスの事例に即して丁寧に検証していく一冊。正直話の大筋それ自体は難しくはあれど、そこまでこんがらがっていないのだが、翻訳の問題なのかはたまた書き手の問題なのかとにかく文章が冗長で必要以上に難しく感じた。あとは様々な個別の事例が次々と挟まれるので、各章毎の話の大筋を見失わないように気をつける必要がある。フランス語ができるのであればおそらく原著を読んだ方がいい。2018/05/06