感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
空猫
21
[精神分析家のジャック.ラカンが1950年英国で刑事になっていたら]という設定なのでどこまで信用出来るか知識の無い自分には解らないのだった。実際の殺人現場写真がモザイク無しで多数掲載され,それを分析しているのだが…しかも強姦された女性や,子供が首を切られている,等むごたらしい事件現場ばかり。なので斜め読み。グロいのが好きな方は写真だけどうぞ。2017/02/22
またの名
10
見たまんまのイロモノ本。しかし、読み進めていくうちに解き明かされる犯罪写真の無意識的な構造と精神分析の胡散臭過ぎるほどの切れ味の良さに、DSM的な発想が依拠するある種の英米経験論あるいは身体生理学一元論が跋扈する現状を、精神分析の魅力と役に立たなさに対する疾しい思いで再考させられる。ヌーメノンすら現象の一部に置き直したドゥルーズの振る舞いに似たところのある一元論の圧倒的支配に抗して、カントやヘーゲルの蘇生を企てるジジェクがラカン派精神分析に立ち返る意味を考えもせずに人が一蹴する時のことをつらつら考えたり。2014/05/07
JunTHR
2
東京が記録的大雪に見舞われた日に、あぁこの一面の雪に死体が転がっていればさぞかし、などと思いながら読了。実際の殺人現場の写真を拡大し、細部に意味を与え、犯人の心理を分析するというラカンの精神分析理論の実践的応用。ラカンを始め、多くの精神分析家の言葉や事例とすり合わせていく。もうこれ、面白すぎる。写真はかなりえぐいが、精神分析のあの独特のえぐさも炸裂してる。たまらん。殺人現場以外にも適用される、精神分析的写真論もまた読み応えあり。2013/01/14
kobbanova
2
実際の殺人現場写真を、ラカンな視点、いや「まなざし」で分析していく。ド・クインシー「芸術としての殺人」の引用から始まり、ジジェクの解説で締め括る。ミステリ的な読み解きは皆無であり、あくまでも精神分析な手法から写り込んだ事物を語り、いやむしろ分析手法を語っているようだ。例えば殺人鬼の思考方法をシュトックハウゼンの試みと対比させたりとか、思いつきにしては興味深い飛躍もまた面白い。2012/09/18
保山ひャン
1
殺人事件の現場写真をラカンの精神機能に関する三類型モデルで読み取る試み。もしもラカンが殺人事件を解こうとしたら、こうなる、というふれこみ。第一章は、現場写真の特殊性から説き起こす写真論。第二章は、ラカンの精神分析とFBIの操作手法の類似性について。3章以下は、倒錯・精神病・神経症の三類型モデルで読み解く。現場写真は生々しいが、それについての理論づけが言い訳めいて笑える。また、ジジェクの解説は、まるでRGの「あるある」みたいで、えんえんといろいろ述べたおした最後の5行で本書について解説してて人を喰ってる。2015/09/18