内容説明
超高齢社会における共助の思想と実践とは何か?!膨大なフィールドワークと精緻な理論に裏打ちされた、上野社会学の集大成にして新地平。
目次
第1部 ケアの主題化(ケアとは何か;ケアとは何であるべきか―ケアの規範理論;当事者とは誰か―ニーズと当事者主権)
第2部 「よいケア」とは何か(ケアに根拠はあるか;家族介護は「自然」か;ケアとはどんな労働か;ケアされるとはどんな経験か;「よいケア」とは何か―集団ケアから個別ケアへ)
第3部 協セクターの役割(誰が介護を担うのか―介護費用負担の最適混合へ向けて;市民事業体と参加型福祉;生協福祉;グリーンコープの福祉ワーカーズ・コレクティブ;生協のジェンダー編成;協セクターにおける先進ケアの実践―小規模多機能型居宅介護の事例;官セクターの成功と挫折―秋田県旧鷹巣の場合;協セクターの優位性)
第4部 ケアの未来(ふたたびケア労働をめぐって―グローバリゼーションとケア;次世代福祉社会の構想)
著者等紹介
上野千鶴子[ウエノチズコ]
1948年生まれ。社会学者、東京大学名誉教授、NPO法人WAN理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
11
A5判二段組500P超、でも、ケアの概念に関わる考察、定量調査の分析、ほぼ参与観察のような現場での取り組みのレポート、どれもそれこそ当事者視点なので全く中だるみすることはない。介護保険のポジティブな意義、「ケアされることを強制されない権利」、家族による介護の近代性。。上げていけば目から落ちるウロコはキリがない。ケアの第一の「当事者」を、支援を必要とする人にまずあえて限ってスタートすることから、広く深く、そして建設的な論考につながっていって、読み進みながら何というかワクワクしっぱなしだった。2012/12/01
kenitirokikuti
9
ケアの定義部分だけ。社会学の定義を引用者パラフレーズして。間人格的(インターパーソナル)な現象である、社会的な相互行為を研究するもの/ケアには、これまで蓄積されてきた不払い労働(アンペイド・ワーク)と再生産労働の理論が適用できる/英語圏では、80年代ごろから使われ始めたケアという言葉は育児(チャイルド・ケア)を指していた。そこにエミリー・エイベルが「ケアする娘」(親から自立したはずの子(特に娘)が親の介護を強いられることを示した。日本語では保育や育児という言葉が先行し、ケア=高齢者介護となった。2018/07/29
黄色と橙
8
筆先は鮮やかで論旨は明解。読者自身の問題としても読むことができるので恐れずに読んでほしい。再生産労働を「産み、育て、看取る」までを含めた一貫したサイクルとして捉え、ケアする側/される側の相互行為に着目する重要性を論じた、上野社会学10年の蓄積。特に、愛・道徳・孝行という言葉で説明されてきたケアの根拠を問うた4章、ケアを“労働”として捉える必要性を論じた6章は痺れました。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重され生き延びるための思想、という言葉は心強い。それにしてもこのボリュームで3000円以下って凄い! 2011/09/13
ざまたかこ
4
高齢者のケアについて書かれているのだけれと、どうしても子どものケアに置き換えて考えてしまいながら読んだ。人の生き死にに寄り添うことは女性的な役割なのか/女性の役割だから労働価値は低いのか/家族の形態が変わるなかでどうとらえなおしたらいいのか/たくさんたくさん書かれていて、難しいのだけど目が離せなかった。そして、どんなテーマでもフェミニズムの視点で切り込んでいくことと同じ時代を生きていく女性たちへのエールを忘れない著者の言葉の重みに私自身がエールをもらった気がした。2014/07/24
もりえ
3
まさに目からウロコの連続。ただ、実際の介護従事者のなかで、こういう観点、視点を持ってる人、持てる人が何人いるかと思うと、ちょっと気持ちが萎えそうになるかなあ、、、。当事者自身からの発信も期待できそうに無いし、、、。でも、何かを信じてがんばろう~~!と思えた本。勇気付けられます。2014/04/11