自傷行為―実証的研究と治療指針

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  • サイズ A5判/ページ数 282p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784772408561
  • NDC分類 493.7
  • Cコード C3011

出版社内容情報

《内容》 リスカ(リストカット)やアムカ(アームカット),タトゥ,根性焼き,皮下への異物挿入――若者に多く見られるこれらの自傷行為の治療は大変困難であるといわれ,教育現場や医療領域の専門家を悩ます問題の一つとなっている。
本書は,境界性人格,精神病,精神遅滞や自閉症などの多様な臨床例に見られる自傷行為について実証的に検討し,病態の理解と治療指針を示したもので,「自傷学」に関する包括的なテキスト,卓越した必読書といえる。
著者らは自傷を行動障害として捉え,実証的研究に基づく臨床実践の蓄積から,自傷行為が他の自己破壊行動(過量服薬や揮発性ガスの吸飲,自殺企図)と一線を画すものであると説く。そして,自傷行為の形式について,先行研究の概観を行い臨床課題を明らかにした上で,治療編においては,認知行動療法,行動療法,精神分析的精神療法,家族療法,集団精神療法を解説,さらに著者らが行っている統合的な多面的治療を紹介している。本書で特に詳細に取りあげられているのが,伝染性の問題とその介入法である。これは現在わが国において,インターネットの自傷関連サイトを通じて自傷者が増加している状況からも,特筆すべき論考といえよう。
自傷と自殺の違い,身体疎外化体験との関連,自傷者本人の発言等,本書に盛り込まれた「自傷」に関するあらゆる臨床的知見は,間違いなく現場で役立つ重要なものであり,対応に苦慮する臨床家にとっても心理面接の技量を向上させるものであろう。    

《目次》
序文
第I部 自傷研究の展望
第1章 自傷行為とは何か?
自傷の形式
自傷の臨床類型
自傷の定義
臨床場面における自傷
自傷の発生率
第2章 自傷と自殺をいかに見分けるか?(その1)
―先行研究の概観と検討―
問題の背景
自殺の亜型としての自傷
「手首自傷症候群」は存在するのか?
自傷と自殺の識別に役立つ特徴は何か?
“Deliberate Self-Harm Syndrome(「故意に自分の健康を害する」症候群)” は存在するのか?
最近の実証的研究
自傷者もまた自殺企図をするのか?
結論と提言
第3章 自傷と自殺をいかに見分けるか?(その2)
―定義にもとづく区別の試み―
自殺と自傷 : その定義の比較
自殺と自傷の定義に関する考察
まとめと結論
第II部 臨床における自傷行為
第4章 青年期における自傷
青年期自傷者に関する調査
幼少期の生活状況と自傷
青年期の生活状況と自傷
青年期における自傷の予測モデル
治療の意味
第5章 自傷の伝染性
先行研究の概観
自傷の伝染に関する実証的研究の試み
自傷の伝染現象をどのように理解すべきか?
結論
第6章 境界性人格と自傷
DSM-III-Rにおける境界性人格障害の特徴
考察とまとめ
境界性人格障害の症例
第7章 精神病における自傷
ここに分類される患者とその自傷形式の特徴
他の精神障害における自傷者とどのように違うのか?
これまでどのような研究がなされてきたか?
自分の眼球をえぐり出した症例
症例の分析
精神病患者の自傷可能性に関するアセスメント
精神病性自傷者の治療
臨床におけるマネージメント
第8章 精神遅滞と自閉症における自損行為
問題の背景
自損行為の原因に関するさまざまな仮説
統合的な自損行為の評価と治療
第III部 自傷行為の治療
第9章 個人療法1――認知行動療法的アプローチ
自傷者の認知における特徴はどのようなものか?
思考パターンを変化させる治療 : 認知療法
自傷を強化しているものは何か?
自傷の強化因子を変化させる
行動療法的介入の追加
まとめ
第10章 個人療法2――精神分析的アプローチ
精神分析的研究においては何が論じられてきたか?
自傷行為の精神分析的定式化
自傷の精神分析的治療の症例――その1
治療経過のまとめ
自傷の精神分析的治療の症例――その2
第11章 家族療法
自傷者の家族のなかでは何が起こっているか?
家族内力動から見た自傷者の類型
まとめ
家族療法の症例
第12章 グループ治療
グループメンバーシップとグループ内力動
グループ治療
第13章 多面的治療
自傷治療についてわれわれが考えていること
家族療法と個人療法を行った症例
入所施設において個人・グループ・家族療法を行った症例
入所施設における重症例の治療
結 論
文 献
訳者あとがき
索 引

内容説明

リスカ(リストカット)やアムカ(アームカット)、タトゥ、根性焼き、皮下への異物挿入―若者に多くみられるこれらの自傷行為の治療は大変困難であるといわれ、教育現場や医療領域の専門家を悩ます問題の一つとなっている。本書は、境界性人格、精神病、精神遅滞や自閉症などの多様な臨床例に見られる自傷行為について実証的に検討し、病態の理解と治療指針を示したもので、「自傷学」に関する包括的なテキスト、卓越した必読書といえる。

目次

第1部 自傷研究の展望(自傷行為とは何か?;自傷と自殺をいかに見分けるか?(先行研究の概観と検討;定義にもとづく区別の試み))
第2部 臨床における自傷行為(青年期における自傷;自傷の伝染性;境界性人格と自傷 ほか)
第3部 自傷行為の治療(個人療法(認知行動療法的アプローチ;精神分析的アプローチ)
家族療法
グループ治療と自傷の伝染現象 ほか)

著者等紹介

松本俊彦[マツモトトシヒコ]
国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部専門医療・社会復帰研究室長、横浜市立大学医学部非常勤講師。平成5年佐賀医科大学医学部卒業。同年横浜市立大学医学部付属病院臨床研修医。平成7年国立横浜病院精神科シニアレジデント。平成8年神奈川県立精神医療センター常勤医師。平成12年横浜市立大学医学部付属病院精神科助手。平成16年現職。精神保健指定医。医学博士。専門はアルコール・薬物依存症、司法精神医学、青年期精神医学

山口亜希子[ヤマグチアキコ]
関東学院大学カウンセリング・センターカウンセラー、スクールカウンセラー。平成9年慶応義塾大学文学部人間関係学科人間科学専攻卒業。平成11年慶応義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。平成11年横浜市立大学学生相談室カウンセラー。平成15年現職。臨床心理士。専門は臨床心理学・学生相談
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