内容説明
本書は、生と死をめぐるこころの問題について、世界6ヵ国の第一線の臨床家及び研究者が参加して行われた国際シンポジウムをもとに編まれた。ターミナルケアア・自殺予防・尊厳死の3項目をめぐって議論が展開し、ホスピスやエイズに関する心理的ケア、老人や子供の自殺への適切な対策、海外における治療戦略など精神医学的視点からの積極的な意見が述べられている。とくに現在センセーショナルに取り上げられる尊厳死については、安楽死が認められたオランダの事情、またナチスの悲劇をふまえたドイツの人の論考が収められ、日本も本格的な死をめぐる議論を起こす時期にきていることがあらためて認識させられよう。死にゆく過程を否認することなく正面から取り上げ、生の尊厳を見つめ直すための果敢な試みである。
目次
第1部 ータミナルケアと悲嘆(ターミナルケアと悲嘆教育;ターミナルケアにおける精神科的課題;死に直面しているエイズ患者の精神病理と精神療法 ほか)
第2部 自殺予防と危機介入(自殺の危険の臨床的評価;精神保健における危機介入の原則;日本の自殺の最近の動向―主として高齢者の自殺に焦点を当てて ほか)
第3部 尊厳死をめぐる倫理的問題(尊厳ある死―オランダにおける自殺幇助に関する議論について;ドイツにおける尊厳死の議論;倫理意識と尊厳死 ほか)