内容説明
経済学の領域を超え、開発論・政治・思想・倫理などにも影響を与えるセンコノミクス。その基本概念を、詳細な用語解説とともに解き明かす。
目次
アマルティア・センへの招待―基本概念を中心にして
第1部 センコノミクスの視座(センの市場経済論;アマルティア・センと社会選択論;貧困・不平等研究におけるセンの貢献)
第2部 セン開発研究の射程(センのインド経済論と開発思想;インド社会・政治研究とセン―民主主義と多元主義の擁護;現代アフリカ研究とセン―比較開発学のための試論;センとジェンダー:構築的普遍主義へ ほか)
著者等紹介
絵所秀紀[エショヒデキ]
1947年生まれ。法政大学大学院社会科学研究科経済学専攻博士課程単位取得。経済学博士。現在、法政大学経済学部教授
山崎幸治[ヤマザキコウジ]
1962年生まれ。ウィスコンシン大学Ph.D(Economics)。現在、関西学院大学経済学部教授
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感想・レビュー
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うえ
5
「貧困と飢饉、餓と公共活動などの著作のなかで、センは、貧困、飢饉、栄養不足などの剥奪状態が、政治体制と不可分の関係のあることを論じてきた。大躍進期に2000万人以上の餓死者を出した中国と比較して、独立インドでは飢饉の発生防止に政府を動かす世論の存在が定期的な選挙制度を備えた民主主義体制によって保障されているという主張は後述するように疑問なしとはしないがセンが好んで繰り返すテーマでもある…こうしたインドと中国の比較によって、90年代のインドの自由化政策への転換に対しても、センは既に理論的準備を…整えていた」2017/05/10
ハンギ
0
アマルティア・センはノーベル経済学賞を獲った、経済学者。インド出身で、公共福祉などについても研究や論争をしたらしい。インドは中国に比べて餓死者を出していないが、民主主義ということで、貧困の撲滅には積極的ではないらしいし、「失われた女性」という問題があり、女性の生存率が他と比べて少なかったりするらしい。貧困や餓死は物の不足というよりも物を配分する仕組みや機能が壊れている事が原因らしい。食料は十分にあるのに、投機的な買い占めによって餓死者がでるという現実は、資本主義社会によるジェノサイドだと思った。2013/08/13
hibiku
0
『不平等の再検討』、『貧困と飢饉』を読んだことはあるが、もう一度きちんとセンの仕事を脳内で整理したくて図書館で借りた本。前半部分、非常によく出来ていると思う。特に序章は、センに興味を持った人が最初に読むと良いかもしれない。いきなり『不平等の再検討』に当たるよりは易しい。ただし、アローの不可能性定理のところに誤植があったり、後半の内容が若干薄かったりで不満も残る。最後の章は、出だしが思いの他仏教仏教してて驚いた。2013/07/24