内容説明
個人と全世界の一切を背負って駆け抜けた巨人・中上健次の文業を網羅。文学・芸能の地平を拓いた言葉の集成2巻完結。
目次
文学(物語の系譜;作家論・批評家論;書評;中上健次が読む;文学・状況;もうひとつの国)
芸能
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Islay
9
ナニモノかから逃れるように歯を食いしばって読み進める。逃れなければならぬ程のナニモノに立ち向かってすらいないのに。過酷な時代を脆弱に生きる僕は、中上健次の巨躯にふさわしい熱波を放つ扇情的な言葉で自らをも鼓舞せしめんと、しかし惨めに縋るかわりに、硬く握った拳で殴りかからんかの思いで。生前の氏なら、それこそ望むところだろう。血によって書かれた文字は、血によって読まれなければならない。偶像に頼ることも、楽園を夢想することも、今は無用。中上が愛した安吾は「堕ちよ」と言った。そして「生きよ」と。言葉は、継承される。2016/05/16