内容説明
教育基本法「改正」反対を訴えてきた哲学者と教育社会学者の二人が、06年4月末に国会に上程された「改正」法案をめぐり緊急対談。教育はどうなるのか。愛国心、格差社会、そして改憲の動きを見据え、学校だけではなく家庭や市民社会へも大きな変化をもたらすことになるこの「改正」のさまざまな問題点をわかりやすく説く。
目次
第1章 対談・教育基本法「改正」を問う(教育基本法「改正」の政府案が出された;「愛国心」をめぐって;格差社会をめぐって;憲法改正と教育基本法「改正」;与党案以上に国家主義的な民主党案)
第2章 教育基本法「改正」法案の批判的考察―国策としての新自由主義・国家主義(「個人の価値」の尊重から国家にとって有用な人材育成へ;主権者にとっての教育から教育行政・政府にとっての教育へ;新自由主義を推進する理念と制度;新自由主義・国家主義の全域化―幼児期の教育から生涯学習、家庭から地域まで;平和憲法との切断、そして改憲へ)
資料 教育基本法/「改正」法案
著者等紹介
大内裕和[オオウチヒロカズ]
1967年神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。専攻は教育社会学。松山大学人文学部助教授
高橋哲哉[タカハシテツヤ]
1956年福島県生まれ。東京大学大学院哲学専攻博士課程単位取得。専攻は哲学。東京大学大学院総合文化研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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katoyann
18
教育基本法改正の目的は、憲法9条を改憲し、「戦争ができる国家」を支える「国民意識」の育成にあるという。現職文科大臣が教育勅語を肯定する発言は、この本で指摘されていたことを応用すると、改正教育基本法の前文で旧法にあった「新しい日本」を削除した影響が出ている。つまり、教育勅語体制と訣別することを謳った部分を消しているために、戦前の国家主義ー軍国主義的教育観を唱えることも可能になったというわけである。 今年は改正から15年目であるが、ヘイトスピーチが吹き荒れ、リコールの歴史的不正が起きるほどの悪影響が見られる。2021/02/28
Takao
3
2006年6月8日発行(2006年6月26日、第2刷)。教育基本法「改正」案の国会提出(4月28日)の直後の5月6日におこなわれた大内氏と高橋氏の対談を第1章に収録し、第2章は大内氏の論文「教育基本法『改正』法案の批判的考察〜国策としての新自由主義・国家主義〜」を収めている。この年12月、教育基本法は「改正」されてしまったが、改悪に反対する運動のために買い込んだ批判本の一冊。「改正」から10年を経たが、あらためて本書を読んでみて、ここで指摘されている問題点は決して杞憂ではなかったことを実感した。2016/12/14
フクロウ
2
2006年の教育基本法全面改正で日本の教育は極めて大きく後退し、転換してしまった。国家主義と新自由主義が公教育に浸透し、個人主義や平和主義、国民主権といった憲法の理念から切断されてしまった。新法2条での教育の目標設定及び旧法10条を真逆にした新法16条による教育行政の教育内容への介入容認、「我が国と郷土を愛する」「態度」の成績評価。そしてこれらは日本会議のホームページで輝かしい活動成果として、そして来るべき憲法改正の準備として国民「精神」をいじりたいという欲求。もう2022年日本は手遅れかもしれない。2022/10/19