感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
15
花さんは猫を撮るために出かけて行く。〈猫だけでなく、猫のまわりの、猫に似合った風景〉を撮るために出かけて行く。路地裏や廃屋に、墓地や荒寺に、〈商店街の裏通り〉の〈空地〉に、〈薄暗い参道の隅〉の、〈飲み屋の提灯の下〉に、或いは店内の、〈入口に近い丸椅子の上〉に、〈家と家の間の軒下の陽だまり〉に、猫はいて、こちらとは無関係に、これまでも、これからも、そのようにして、居続けるのだと言った風。猫は例えば〈壊れた植木鉢や木箱といっしょくたになって〉寝ていたりする。とてもよい。花さんの撮る猫と〈猫に似合った風景〉は。2022/04/01
宇宙猫
13
★★★★★ 風景や物が昭和らしくて懐かしい。猫は今の写真集より警戒感が強くて野性味が強い感じがする。写真の撮り方のせいかも知れないけど。2023/06/30
ナハチガル
8
古書店で発見。野良ネコ好きにはたまらない一品。この本に納められているネコたちは、たたずまい、目つき顔つき、どれをとってまったくかわいくない、すさんだ町にさまよう住所不定・無職のオッサンのようで、たまらない味がある。唐十郎さんの序文がついているが、著者のほうがよっぽど文章がうまいと思う。「たいての墓地には猫がいるのだが、一匹もいなかった。セミが鳴いて蚊と鳩がいた。仕方がないからお墓を撮った」。名文である。「東京の町は、どんどん変わってしまいました。ここに写っている風景は、今はほとんどありません。」A++。2019/08/12
NагΑ Насy
6
光と影のあわいにあらわれるもの。2015/02/14
timeturner
5
東京だと言われても信じられないようなゴミだらけで廃墟のようなボロ家に、これまたボロボロの猫たち。ここに写っている猫たちは「抱かれない哲学を胸に秘めた猫」だ。痛々しいが毅然としている。2017/01/09