内容説明
先進技術立国ニッポンの飛躍を支える東京・大田。伝統を受け継ぎ、いまの技に挑む、小さな工場の夢ある工匠たちの物語。
目次
「不可能を可能に」は親ゆずり―田中隆さん
“ひとり親方”大田の代表格―岩井仁さん
静かなる熟練の先―平瀬光信さん
スティールパンづくりをきわめた―園部良さん
兄弟で工匠に―中井達郎/徳三さん
平成を生きる鍛冶職人―小林政明さん
高精度な要望ほど挑戦したくなる―小宮秀美さん
蒲田で江戸切子の伝統を―鍋谷馨/聰さん
玩具で雌伏、そして雄飛―高田栄一さん
空洞化に負けないで―古沢勝男さん
「仕事の仏ですよ」―悉知薫さん
超微細加工で世界一をめざす―平船淳さん
NC言語を豊かにする工匠―幸保榮さん
美意識の高いTig溶接―浪田野寿好さん
多品種少量生産時代のNC職人―伊奈勲さん
著者等紹介
小関智弘[コセキトモヒロ]
1933年、東京生まれ。高校卒業後複数の町工場で五十年間、旋盤工として働くかたわら、作品を発表。75年に『粋な旋盤工』を発表後、工場街に生きる人間模様を描いて81年に『大森界隈職人往来』で日本ノンフィクション賞を受賞する。2003年科学技術普及啓発の功績で文部科学大臣賞を、2004年『職人学』で日経BPビズテック図書賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
58
まずやってみる!文字通り「工」。創出。技に驕ることなく、日々の鍛錬が研ぎ澄ます勘所。印象的なのが『路地裏ネットワーク』。匠の結集。念頭にあるのは、言うまでも無くお金ではない。やはり達成感ではなかろうか。物質主義に洗脳され続けている身からすると、皆さん1人1人の生き方がやはり羨ましい。一方、後継者がやはり課題という印象。血ではなく、心が継ぐ技術と志。唯一の”師”である小宮氏。師の重みを改めて感じる。機械じゃないだよなぁ、五感なんだよ。2016/10/06
あちゃくん
44
大田区の町工場で働く匠たちのインタビュー集。インタビュワーが、同じ大田区でずっと旋盤工として働いていた小関さんなだけに、その筆致や視点はやさしく温かさに包まれています。こういう人たちが日本のものづくりの最前線で支えているんだなと思うと、ありがたくもあり誇らしくもあり。どの匠も男として憧れるかっこ良さを持ち合わせた素敵な人達です。2013/10/19
kishikan
36
池井戸さんの下町ロケットは、東京大田区の町工場の話。でも、大田区では佃製作所は大工場で、大半は従業員9人以下、5割は3人以下、つまり3ちゃんあるいは一人親方の工場だ。この本はその3人以下の工場の中で、特に優れた技能を持つ者を大田区が「工匠」として選定し、その中の15名を訪ね歩いたルポ。書き手は元旋盤工で直木賞候補にもなった小関さん。普段は無口な職人さんが、いかに優れた感性を持ち、失敗を繰り返しながら夢を形にしてきたかがよく分かるし、胸が熱くなる。日本の最先端技術は、こういう人達に支えられているんだ。2013/09/25
けんとまん1007
8
工、匠。生きることの証とでも言えばいいのかもしれない。もちろん、ここで紹介されている方たちは、そんじょそこらの方たちではない。今までのこの国、今のこの国を代表する人たちであり、これからのこの国を代表する日立でもあると思う。一見、華々しい人たち、世界とか先端とかという言葉で飾られる人たちは、絶対に適わないものがここにはある。自分の身内・ちかしいところには、職人系が多いでの、すっと入れるものがある。自分の子どもたちのことを考えると、職人というのも重要な位置にあると思う。2013/11/03
Humbaba
6
道具の進化によって簡単にものを作成できるようになる。そのような道具を使うのは悪いことではないが、簡単にできるということは、誰にでもできるようになるということである。そこで技術を磨くことをやめてしまえば、労働の単価はどんどん安くなっていき、やがては仕事を失うことになる。常に上を目指し続けることで、他の人にはできない技術が身につけられる。2013/12/24