内容説明
人命を危険にさらさなければ維持できない「先端技術」。原発下請け労働者の視点から描写される放射能管理の実態。
目次
1 美浜発電所(二次系での作業の日々;いよいよ一次系へ)
2 福島第一原子力発電所(放射線下の労働―そして事故;再び福島へ)
3 敦賀発電所(悪名高き労働現場へ;原子炉の真下で)
あとがき
文庫版あとがき―にかえて
跋―もしくは「最終章」として
著者等紹介
堀江邦夫[ホリエクニオ]
1948年東京生まれ。記録作家。コンピュータエンジニアを経て、1974年フリーライターに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
68
読み終えてやはり重い気持ちに。79年刊の旧版を読んだ40年前の記憶が蘇る。原発定期検査に日雇い労働者として従事した潜入ルポ。関電美浜→東電福島→日本原電敦賀の各原発を約7か月間、渡り歩く。原発労働者の厳しい現実。被曝の恐怖を抱きつつ生活のため防護服を着て放射線管理区域に入っていく。設定許容線量を超えたことを知らせるアラームで作業員を交代させる人海戦術。あまりの息苦しさで内部被爆の危険を冒して防護マスクを外してしまう作業員。電力→元受→下請け→孫請け→ひ孫請けと連なる受注体制、日雇い労働者が支える原発稼働。2019/08/02
あめま
25
原発労働潜入ルポ。原発の稼働は、末端労働者の被曝なしには成立しないことがよく分かります。つまり、原発の安全神話なんて最初から崩壊していると言えます。国策として早急に原発を停止し、発電効率は悪くても太陽光発電に切り替えていくことを望みます。中国人が買おうとしている日本の土地を国が買い取り太陽光発電を設置すればいいのに。何があっても中国人に売るのは断固として阻止すべき。また、多数の仲介業者のピンハネにより原発末端労働者の手元には十分な金が入らないことについても国は中抜きを阻止する仕組みを作るべき。2021/03/10
モリータ
15
◆著者は48年生の記録作家。コンピュータエンジニアを経て、1974年フリーライター。78年9月-79年4月の間の、美浜・福島・敦賀原発での下請け労働のルポ。その意図はあとがき(引用コメ)で。労働者が日常的に被曝する苛酷かつ杜撰な条件下での重労働の現場を描く。◆原著は79年『原発ジプシー』現代書館→84年講談社文庫→2011年『原発ジプシー』増補改訂版(本書)現代書館および改題して『原発労働記』講談社文庫。原著からの二度の改訂は根本的なものでなく、不正確な表現などの修正、イラスト追加(ただし誤字脱字多い)。2022/02/28
ハチアカデミー
12
地を這うようなルポルタージュ文学。原発の実体を知りたい、伝えたいというモチベーションで本書を書き上げたことが凄い。二次情報を元に描くのではなく現実と「直接話法」で向き合うことを、私たちはきっと疎かにしているの。あまりにも体験ではなく「情報」に左右されているし、左右されていることの怖さを強く感じた。労働環境も、原発を取り巻く環境もいろいろと変化はしているであろうが、その実態や構図はいまも変わらないはずだ。ならば、安手の「次なる構想」を考えるより、フクシマの現在をしっかりと見つめなければならない。2013/09/30
ophiuchi
8
読み進めるのが苦しく途中で止めようかとも思ったが、それでは原発の実態に目を背けていた3.11以前と同じになってしまうので何とか読み通した。存在自体がそうだが、ずさんな管理と非人間的な設計で、弱者により多くの被曝を強いている原発というシステムは正に「パンドラの匣」だった。福島第一原発で今働いている人達を思うと胸が痛い。2013/09/18