出版社内容情報
本書は、研究の実践の過程で、研究倫理が問われる多様な場面を想定し、問題の解決策や方法を提示、当事者性を意識した1冊である。
▼人文・社会科学系のための初の実践的ガイドブック!
研究者として守るべき研究倫理への意識を共有化・標準化するための、人文・社会科学系向けとしては初のガイドブック。
不正防止のためのガイドラインといった「べからず集」では対応しきれない、「倫理を問われる場面」(=ジレンマを伴う場面)に直面した場合の共通の認識と解決の方向性こそが、研究者の日常には必要とされている。
本書はこの要請に応え、研究の実践の過程で遭遇する研究倫理が問われる多様な場面を想定し、問題の解決策の提案ないし解決のための糸口や方法を提示するような、当事者性を意識した実践的かつ実用的な、必携の1冊である。
研究者を目指す大学院生、学生を指導する教員、研究機関の研究支援業務担当者のいずれもが、自分のこととして身近に引きつけて考え、ディスカッションにも使えるような内容となっている。
まえがき
序章 今、なぜ研究倫理なのか
1 はじめに
2 研究とそれを取り巻く現代的状況
3 「研究」、「倫理」、「研究倫理」
4 研究不正
5 研究不正とグレーゾーン問題
6 研究倫理の射程
7 研究倫理をめぐる2つの誤解?@――研究倫理は単なるコンプライ
アンス
8 研究倫理をめぐる2つの誤解?A――研究倫理は難しい学術研究
9 専門職倫理としての研究(者)倫理
10 専門職の倫理綱領と3つの倫理モデル
11 研究者の徳目
12 倫理テスト
13 倫理テストの使い方
14 倫理テストの予行演習
15 研究倫理はなぜ必要か
16 なぜ研究倫理か?
第1章 研究方法に関する倫理問題
▽話し合ってみよう▲
1 文献研究
2 歴史的価値を持つ資料を扱う研究
3 人間を対象とした研究――信頼関係と成果の還元
4 人権の尊重とインフォームド・コンセント
5 領域横断的な研究プロジェクトの場合
6 残された論点――倫理綱領で網羅できない問題としての研究倫理
7 結論
◇◆研究方法別Column◆◇
?@ 文献研究
?A インタビュー
?B フィールドワーク
?C アクションリサーチ
?D 社会調査
?E 実験
第2章 研究計画・遂行・成果発表に関する倫理問題
▽話し合ってみよう▲
1 はじめに
2 研究上の不正行為をめぐる状況
(1) 不正行為は僅かか?
(2) 不正行為を誘う誘因や誘惑の増加
(3) 理想と現実の乖離
(4) 科学研究の商業化
3 研究活動の現実
(1) 明らかな不正行為と理想的な研究行為
(2) 責任ある研究活動
(3) 好ましくない研究活動
4 研究行為のマネジメントに関する具体的問題
(1) 計画段階の問題
(2) 実行段階の問題
5 おわりに
第3章 研究における不正行為
▽話し合ってみよう▲
1 はじめに
2 研究不正とは?
(1) 「捏造」「改ざん」「盗用」
(2) 「オーサーシップ」
(3) 「二重投稿」
(4) 「研究費の流用」
3 研究不正の背景
4 人文・社会科学系研究における研究不正の特徴
4 人文・社会科学系研究における研究不正予防のために
6 おわりに
第4章 指導教員・研究機関の責任
▽話し合ってみよう▲
1 はじめに
2 研究環境の問題領域
3 組織倫理の一般的問題
4 管理職の課題
(1) ミッションの明確化と倫理規範
(2) 目標設定
(3) インセンティブ制度
(4) 雇用
(5) 研究管理
(6) 教育訓練
5 指導教員の課題
(1) 目標設定とインセンティブ
(2) 研究管理と教育訓練
第5章 研究者の社会的責任
▽話し合ってみよう▲
1 はじめに
2 研究者の社会的責任とは
3 学会ジェンダー問題
4 時事問題への対応
5 通俗化と相互批判――脳ブームの事例
6 専門性の否定と市民の知
第6章 行政・社会のあり方と研究者の倫理
▽話し合ってみよう▲
1 文部科学省による研究不正ガイドライン
(1) ある専門調査員による総評
(2) 科学研究の社会的基盤
(3) 研究の独立性と自律性
(4) 研究不正対応の二つの方向性
(5) 研究不正の通報
(6) ウェブ上での研究不正の告発
(7) 研究倫理教育の支援
(8) 研究者コミュニティと行政の立ち位置
(9) 不正への取り組みのオープンネス
2 研究不正をめぐる社会と行政の応酬
(1) 研究者・研究機関の負担
(2) 不正防止強化と厳罰化
(3) 調査・措置の公正さ
(4) ウェブ上の情報の扱い
(5) 不正が誘発される環境の改善
3 研究不正が起こる背景という争点
☆★ 分野別Column ☆★
1 人文・社会科学系研究者とジェンダー問題
2 地域研究における非民主主義体制研究と研究倫理
3 経済学を用いた政策提言について
4 ジャーナリズム学と研究倫理
5 法学研究における研究倫理
付録◆人文・社会科学系における研究不正の事例
あとがき
索引
執筆者紹介
【著者紹介】
眞嶋 俊造
北海道大学大学院文学研究科准教授
内容説明
研究倫理の遵守が求められるのは、本来、研究と研究に関わる活動を円滑に進めるためであって、不正行為を防止することだけを目的として研究者の手足を縛るためではありません。研究倫理についてよく知り、よく実践できる研究者は、自分の研究に誠実な、できる研究者と言えるでしょう。本書は、学生や研究者の皆さんが研究の過程で遭遇する研究倫理を問われる多様な場面を想定し、何が問題になるかを知り、それについてどう考えるか自問し、実践につなげていくための、また、「健全な」研究倫理教育・啓発制度を考えるための、ヒントと提案がつまったガイドブックです。
目次
序章 今、なぜ研究倫理なのか
第1章 研究方法に関する倫理問題
第2章 研究計画・遂行・成果発表に関する倫理問題
第3章 研究における不正行為
第4章 指導教員・研究機関の責任
第5章 研究者の社会的責任
第6章 行政・社会のあり方と研究者の倫理
著者等紹介
眞嶋俊造[マジマシュンゾウ]
北海道大学大学院文学研究科准教授
奥田太郎[オクダタロウ]
南山大学人文学部/社会倫理研究所准教授
河野哲也[コウノテツヤ]
立教大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。