内容説明
パウル・クレーは、抽象的フォルムと現実のイメージにまたがる領域を自由自在に横断し、すべての近代画家の追随を許さない豊かで不可思議な作品群を生みだした。光と物質、形態と記号、あるいは生命的運動と幾何学的思考など、そもそも矛盾しかない造形がなぜ可能になったのか、また、繊細かつ魅力あふれる色彩絵画は、いったい造形理論とどのように関連するのか―ゲーテ、オストヴァルト、アルプ、ヘルツェルを参照し、クレー芸術の核心に迫る。
目次
1 形態(クレーにおける「分節」概念の成立;「自然研究の道」―画家クレーにおけるゲーテ;エネルゲイアとしての造形―ゲーテの植物学と二十世紀美術;結晶としての造形―クレーとモデルネ;コンステレーションとしての造形―一九三〇年のクレーとアルブ)
2 色彩(クレーにおけるオーバーラップ―もうひとつの制作論とガラス絵;クレーと色彩論;クレーとオストヴァルト;色彩論のイデオロギー―オストヴァルトと一九一〇年代の芸術と制度;絵画の導きとしてのエネルギー―クレーとゲーテ・再考)
3 セミオーシス(眼―クレーにおける記号と形態;「美しい石切り場」―階層のありか;アトリエの不在者―力のトポロジーとしての「部屋」;語り手としての画家、そして語り手たち―クレーとリルゲとハウゼンシュタイン;クレーとベックマンにおける神話的ノーテーション―墜落/飛行する男性/女性)
著者等紹介
前田富士男[マエダフジオ]
中部大学人文学部教授。慶應義塾大学名誉教授。1944年生まれ。66年、慶應義塾大学工学部卒業、68年、同文学部卒業。71年、同大学院修士課程修了。74年に同博士課程単位取得退学。神奈川県立近代美術館鎌倉館に勤務後、ボン大学美術史研究所に留学(DAAD)。北里大学教養学部、慶應義塾大学文学部、助教授、教授を経て、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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