内容説明
熊本県天草の小さな縫製工場が倒産し、未払いの賃金も取け取れないまま、強制帰国を待つ中国人研修生。しかし彼女たちは、奇跡的にも労働組合のローカルユニオン熊本に出会い、裁判闘争に立ち上がった…。2008年に熊本で開かれ、参加者に衝撃を与えた「外国人労働者問題シンポジウム」を軸に、非正規労働の最底辺に位置する外国人研修生の問題を広く深く考える。
目次
第1部 「外国人労働者問題シンポジウム」より(熊本でたたかわれている中国人実習生の二つの裁判;講演 外国人研修・技能実習制度は現代の奴隷制度;討論 外国人労働者の受入れをどう考えるか)
第2部 裁判に立ちあがる(裁判の継続に立ちはだかる在留資格の更新問題;外国人研修生たちの相談に労働組合はどう対応するか;研修生弁連を設立 ほか)
第3部 寄稿 外国人労働者の受入れをどう考えるか(外国人研修生制度の闇;外国人労働者を安易には受け入れられないこの国の現実;労働開国の時代に忘れてはならないこと ほか)
資料
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
CCC
11
パスポート、印鑑の没収。PC、携帯、外出、交際、ストライキ、行政への訴え、他の研修生との団結、他の労働者との友好的な関わり、これらの禁止。被害例で奪われていたものはあまりに多い。さらには嫌なら国に帰れという事実上の脅し。他行動を取る余裕を奪う長時間労働。こうした研修生を縛る糸の一本一本は、相補的に作用しているようにも思えた。権利、選択肢を奪う技術のようですらある。とすると一つ一つの権利を認めることが、他の権利を守る事にも繋がるのかもしれない。本の話は10年近く昔だが、はたして現在はどうなっているだろうか。2018/03/14
tellme0112
8
2009年に出されていたのか…。なんで知らなかったんだ!と思った。法改正で研修生、実習生の拡大なんてとんでもない。韓国にならって外国人基本法が欲しい。労働組合、大学、弁護士、との連携が心強い。そしてもう10年なんだな。2018/10/25
テツオ
3
以前、中国人研修生が受け入れ先の人を殺害したというニュースを見たとき、なんてことをするんだと思った。でも、この本を読んで知ったのは、そこまで追い込まれるほど外国人研修生が肉体的、精神的、経済的に苦痛を受けているということ。まさに、このタイトルのとおり「奴隷労働」を強いられている。殺害された農家の人が、そういう扱いをしていたかどうかはわからないが、国際交流、貢献の名の下に研修生を受け入れているが、その実態は、一日中働いても、月給5〜6万円。問題だらけの研修制度を改善しないと、日本は世界に顔向けできない。2012/07/04
まい太郎
2
SNSでSOSを出しやすい今だから顕在化してきた問題だろう。本書は10年前の本だが残業ばかりで働きそれでも貰える賃金は月5000円など驚きを超えて怒りさえ感じる。国際貢献など建前にすぎず実際は安い労働力を求めているだけ。いっそのこと外国人技能実習制度という制度を廃止したほうがよいのではと感じる。2019/07/02