内容説明
強制的な移転や放置には反対だが、すべてを維持するのは非現実的。生活と共同体、国土の保全を見据えた、選択的な撤退とは。過疎集落の現実を直視した、「もうひとつの提案」。
目次
第1章 過疎集落の現状
第2章 予想される国の将来
第3章 すべてを守りきることができるか
第4章 積極的な撤退と集落移転
第5章 積極的な撤退のラフスケッチ―生活編
第6章 積極的な撤退のラフスケッチ―土地編
第7章 積極的な撤退と地域の持続性
著者等紹介
林直樹[ハヤシナオキ]
横浜国立大学大学院環境情報研究院・産学連携研究員。1972年生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。博士(農学)。総合地球環境学研究所・プロジェクト研究員などを経て、現在に至る
齋藤晋[サイトウススム]
大谷大学文学部・非常勤講師。1973年生まれ。京都大学大学院農学研究科地域環境科学専攻博士後期課程単位取得退学。総合地球環境学研究所・研究推進支援員などを経て、現在に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
2
本書には目をそむけたくなるような、限界集落の朽ち果てた家屋の写真も堂々と掲載している。そして、過疎問題のたたき台とはじめに書かれている。確かに戦略的に撤退して、高齢者の暮らしがスクラムを組めば、てんでに住むよりは安心感や効率もいいかもしれない。だが、評者は諸手を挙げて賛成はできかねる。生まれ育った住まいからは離れたくない、と考える3.11の原発被害の方々も飯館村の方の存在も大きいと思えるからである。山古志村もそうした地震さえなければ、というケースだと思う。「種火集落」(120ページ)支援策が問われる部分。2012/10/20
にわ
1
タイトルが刺激的だが、様々な視点から現実的な集団移転の落としどころを探る。集落が完全に疲弊してしまってからでは手遅れになってしまうため、その前に議論を進めることが大切。行政のグランドデザインも大切だが、何よりも集落の住民の同意形成が大切。東日本大震災前の著書であるが、震災で被災した地区の例も参考になるかもしれない。2020/02/21
プラス3
1
限界集落にとっての退却戦の戦い方が学べる本2011/08/19
いせやん
0
限界集落に陥った農村から、いかに上手く撤退してみせるか、という本。全ての農村を維持することはできないということを語る前半は必然的に暗い雰囲気になるが、後半の「維持」「粗放化」「自然に返す」という三段階に分けての撤退計画は、細かいデータ等もあるものの全体的に分かりやすいし、「これながいけるかも」という気になれる。専門書だけど専門外の人でもまあまあ読める内容なので、(自分のような)農村出身者はぜひ。2015/12/22
U4
0
増田レポートの影響により、地方創生論が叫ばれる今日この頃。農村の消滅を防ぐために、この本は「撤退」という考え方を打ち出しています。いわゆる限界集落と名付けられる場所から「撤退する」と聞くと、ネガティブな印象を与えかねないが、この本が推奨しているのは、「積極的な撤退」である。それは、ダム建設などによりやむなく撤退せざるを得ない消極的な撤退と違い、農村に共住している人自らの意見で集団撤退を望むことである。確かに、一番に尊重されるべきは農村に住む人々の意見だが、この本で述べられる撤退のメリットも興味深かった。2015/04/18