内容説明
同じ造りの二軒の家の片方が焼失して十余年。残された“二軒家”は川越の「町づくりの会」によって、昭和の生活を紹介する資料館として改修されることに。片付けのボランティアに参加した守人は、家の声の導きで、天袋に収められた七段飾りのお雛さまを見つける。しかしなぜか、三人官女のひとつが欠けていた。雛飾りの持ち主を探す守人たちは、二軒の家に暮らした家族の想いに寄りそってゆく。過去を知り、未来に向き合う力へと変えつつある守人の歩みを描く。シリーズ第三作。
著者等紹介
ほしおさなえ[ホシオサナエ]
1964年、東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」で、第38回群像新人文学賞優秀作受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
293
読んでて、川越という町は、穏やかで時の流れがゆったり流れているのだろうかと思い、行きたくなることはもちろんのこと、住んでみたいとも思う。縁が縁を呼び、守人の能力のルーツも川越の町と繋がり、桐一葉もまた登場、そして、三日月堂の悠生さんも登場。別シリーズとも繋がり、縁の繋がりをより強く感じる今作でしたね。静寂の中に温かさと優しさがいっぱい詰まっていて、心が洗わされ優しい気持ちになれました。2020/06/21
しんたろー
253
第3巻は守人が自身の生き方に気付く話になっていて、主人公らしくなってきた…3つの話は、温かな人情が根底にあって、先人たちとの結びつきや周囲との繋がりが、川の流れのように描かれていて、それが守人にフィードバックされているからだろう。「自分のやりたいことを探していると答えが出ない。人の役に立つ(人に喜ばれる)生き方もあるのではないか」というメッセージに考えさせられた…正反対の道を歩んできた私だが「そうだよなぁ」と思えた。ファンタジーを織り交ぜた雰囲気、川越の素敵な描写、べんてんちゃんの前向きな性格が魅力的💛2020/08/19
へくとぱすかる
169
修士課程のあと守人はどうするのか、という進路の迷いと、家の声を聴くという幻想小説としての一面、3番目には起業・町おこしのシミュレーションとしての物語。テーマの群がこの先どのようにからまっていくのかに注目すべきだろう。時代は現代だが、古民家、切り絵や養蚕など、扱われるものがすべてレトロさに彩られているために、古い小説を読んているような感覚。とはいえ2020年の作品です。第3話は例の活版印刷・三日月堂が出てきて、まさに川越ほしおワールドとでも言うべき作者の創作世界。シリーズの境界を越えて、つながりを楽しんだ。2021/05/15
シナモン
164
川越を舞台にした月光荘シリーズの3作目。言葉にすることで抱えてるものが軽くなる…これまで自分の感情をあまり出さない守人だったけど、田辺くんとお互いの過去を語り合う場面にじーんときた。無理に決めるのではなく、自然と目の前に道が開ける…そんな将来が守人に訪れるといいな。終盤、三日月堂が出てきてドキドキ。川越、今回もほんとに素敵な町でした。2021/04/27
SJW
122
シリーズ第3作目。今回は3つの連作短編で、雛の家、オカイコサマ、文鳥の宿。雛の家では月光壮で雛人形が展示されて過去の涙腺が緩む展開。オカイコサマでは、遠野守人のゼミの同期の田辺の実家に遊びに行くが、驚く事実が判明する。文鳥の宿では、三日月堂とのコラボで多くの人達の協業は、読んでいて力をもらえる。守人は今後の進路に何を選ぶのかが気になってしまう。また今回は観光資源としてどうすべきかというヒントが多くあり、地方活性化に役立てられるのではと考えてしまう。2021/04/03