内容説明
変種のアリを追って、東北の山村に迷い込んだ、東京の大学の講師で昆虫学者の山上一郎は、瀧埜上村の仮巣地区の人々に助けられ、命をとりとめた。翌年、山上は医師でもある妻の和子を説得し、一年間のフィールドワークのために、再び仮巣地区を訪れた。この村には医師がいなかったため、和子にとってもそれはやりがいのある仕事に思えたのだった。優しくて、親切な村の人々。だが、何日かその村で生活していくうちに、和子は違和感を覚える。―みんな健康的過ぎる…医師もいないのに…。
著者等紹介
乾ルカ[イヌイルカ]
北海道在住。2006年に『夏光』で第86回オール讀物新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaC
125
うわ。とても不気味で、とても怖くて、とても面白かった。血は途絶えないどころか、進化してるし…2011/11/09
財布にジャック
114
帯に「すごいすごいすごい」という赤い大きな文字が躍ってましたが、ホントにすごかったです!人里離れた村が舞台で、「よそ者は、ここから先は行ってはいけない」と言われると行ってみたくなりますよね。ちょっとグロい描写が気になるものの、ラブストーリーがベースで、グイグイ読ませます。だって、行ってはいけないその先が、気になって気になって、勿論一気読みしました~!これをもし京極夏彦さんが題材にしたら、あと500頁は余裕で書けたと思うと、頁が少なめなのが残念です。2011/06/14
相田うえお
110
★★★★☆19074 作品毎に作風が極端な作家さんって、明るい作品を白◯◯,暗い作品を黒◯◯って言いますよね。ルカ先生も両極な白黒作品が多いですよね。だだ、白ルカの対極はグロ系の黒じゃなく怖〜い闇の黒。んで、本作品は多分、黒。新種のアリを探しに崇拝的魔境?隠れ里?に移り住んだものの、その村で摩訶不思議な事が...と始まります。前半はホラー色が強いんですが、後半は何故か恋愛ストーリーに変化していきます。っていうよりも、前半の主人公が母ちゃんだったのに、後半からは娘が主人公と思ったらラストは孫娘かい!忙しい〜2019/08/14
PSV
91
何とも言い難い、変な感じの作品。アンバランスと言えばアンバランスだし、良い意味でも悪い意味でも、前半と後半のテイストの違いが何とも。結局は恋愛ものと言うか、恋物語に落ち着くのだが、そこまでの描写に少々の難あり。ルカたんは「プロメテウスの涙」のアレな描写が好きなだけに、今回も内臓系な描写をバシバシ出してくるのかと思いきや、かなりおとなしめ。んー、頑張ろうぜ、ルカたん。 ★★☆☆☆ 2012/10/24
けい
86
山間の小さな集落である仮巣地区を舞台に祖母・母・娘3代に渡る愛情と血と約束をめぐる物語。全体が二部構成になっており、一部で展開されるのは祖母「和子」を語り部として描かれる集落の異常さと抱えている秘密。二部では母「優子」を語り部として、村の全貌と男女の愛そして運命への抵抗を描いていきます。話自体はどこかでって感じの展開なのですが、「ここ」という所で見事に回収してくれる伏線のおかげで面白く読めました。黒王の見た未来は正しかったのだなと思わせる納得の結末は見事でした。2014/05/10