内容説明
初期作品の華麗な表現の底に流れる「虚無」の存在を具体的に探り、そこから出て、人間の心理の内奥の秘境に肉薄し、一方では二十世紀前半の激動の社会に日本人であることのアイデンティティを確認しようと苦闘する横光利一の、文学的営為の意義を考察する。
目次
横光利一・文学の軌跡―「序」に代えて
初期作品と青年・横光利一―「虚無」からの創造
「御身」
「蠅」・「頭ならびに腹」再論―蠅・子僧と構図を中心に
「春は馬車に乗って」
「上海」
「機械」―戯画化された自意識の混迷
「旅愁」
「夜の靴」―自己流謫の書
「旅愁」「秘色」と伊勢神宮
「雪解」解説
著者等紹介
浜川勝彦[ハマカワカツヒコ]
昭和8(1933)年12月、神戸市生まれ。京都大学文学部文学科国語学国文学専攻卒業。専攻は日本近代文学。三重県立上野高等学校、松蔭女子学院大学、京都女子大学を経て、平成9年3月奈良女子大学を定年退官。現在、奈良女子大学名誉教授、神戸女子大学教授。著書に『中島敦の作品研究』(明治書院)、『鑑賞 日本現代文学17 梶井基次郎・中島敦』(角川書店)、『伊勢志摩と近代文学』(監修・和泉書院)、『梶井基次郎論』(翰林書房)などがある
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