内容説明
哲学上の難問を唯物論・進化論的に説明し、人間を魂の呪縛から解放するとんでもない本。
目次
第1章 自然の自由
第2章 決定論について考えるためのツール
第3章 決定論について考える
第4章 リバータリアニズムの言い分をきく
第5章 これほどの設計はどこからきたの?
第6章 オープンな心の進化
第7章 道徳的行為の進化
第8章 あなたはカヤの外ですか?
第9章 自分で自分を自由へと引き上げる
第10章 人の自由の未来
著者等紹介
デネット,ダニエル・C.[デネット,ダニエルC.][Dennett,Daniel C.]
1942年生まれ。ハーヴァード大学卒業、オックスフォード大学院にて博士号取得。タフツ大学教授、同認知科学研究センター所長
山形浩生[ヤマガタヒロオ]
1964年生まれ。東京大学都市工学科修士課程およびマサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。大手調査会社に勤務のかたわら、科学、文化、経済からコンピュータまで広範な分野での翻訳、執筆活動を行なう
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
34
19
デネットの物の観方・考え方がよくわかる好著。本書で主張されているのは、「決定論と人間の自由意志は矛盾なく理解できる」というただこれだけのことである。このテーゼを読んで興味をもたれた方は読んで損はしないだろう。デネットの議論を支えるのは、「ライフゲーム」という単純な規則から興味ぶかいふるまいが出てくるセルオートマトン型のシミュレーションゲームである。このゲームが与えてくれる直観をもとに、完全に決定論的な下部構造から、デザイン性の次元が、デザイン性の次元から志向性の次元が導出されるという議論が展開されている。2017/05/11
笹帽子
6
山形さん飛ばしすぎ。読みやすかった。するする滑りすぎて逆に読み直さないと頭に入らなかったりした。全体的にデネットが言いたいことには概ね納得できる。特に進化論のところとミームのところがとても面白かった。物理学的決定論をかわそうとしてるところには最後の最後でちょっと無理がある感じがした。言いたいことはわかるんだけど、あんまり説得力がないと思う。ライフゲームあたりで期待が高まっていた割に、ガツンと来る最後の一発がなかった。2011/06/17
むとうさん
4
決定論的な世界観と自由意志が両立できない?という見方への批判から始まり、(人間にとっての)自由は受け継がれ改良されていくある種の「能力」なのだという主張をしている本。著者は(解説によると)哲学者らしいが、実は本文を読んでいる間は進化生物学者だと思いこんでいた(汗)原題が「freedom」なので政治的な主張のある本ではないのだけれど、登場する(著者への)反論を見るとこの辺は海外でも少し混乱があるのかなと思ったり。そして相変わらずの訳者解説の山形節でした。2012/08/17
静
4
著者は私の持っている問題意識を実際に考え進めていった人だ。著者への反論に「そんなことを思いつく人がいるんだ」と思ったし、著者に共感しすぎて読みにくいと思ったこともあった。言われて納得するのではなく、反論できるくらいには自分で考えられるようになりたい。2011/02/12
しんかい32
4
『解明される意識』に比べるとぬるい印象。若干守りに入ってないか?「世界が仮に決定論的だとしても、それは僕らを成り立たせているよりミクロなレベルでの話で、実質的には自由意志があるも同然だから心配ない」みたいな論調って本書以外でも見かけるけどあまり説得力を感じない。マクロとミクロが、デネットの言うほど明快には分離していないからこそ、決定論の不安が生じるのでは。そうした青臭い実存問題を重視しないのも著者のよさではあるが。2010/03/23