目次
1 ヴンダーカンマー(「小さな部屋」の大きな叡智―バロック驚異博物館瞥見;怪物のテクスト、テクストの怪物―渋沢龍彦博物誌;二〇世紀末〈驚異〉博物館への熱い思い入れ―荒俣宏の大構想;博物学的想像力―J・バルトルシャイティス)
2 アルス・メモラティーウァ(宇宙、このすべてが繋がる劇場―「イエイツ・テーゼ」の真の射程;トータル・リコールの記憶術―フランセス・イエイツ以降覚書;記憶するファブリカ;権力のモデュロール)
3 パースペクティヴ(魔の王が見る―遠近法のバロキスム;語れ、ハーマイオニー―シェイクスピア晩年劇の秘密;パピロマニアック―絵はすべからく「だまし絵」であること;「ものさし」のバロック―パラドクス体感;イリュージョンズ―「奇」と「偽」の世界)
4 グリーナウェイ的(ガストロフィルム―『コックと泥棒、その妻と愛人』とその後;Ce tableau mort―一七世紀、オランダ、映画;This fruitful cinema―『英国式庭園殺人事件(画家の契約)』
These drippy frames―『プロスペローの本』
This marvelous possession―体感バロック
グリーナウェイぶり―サリー・ポッター『オルランド』
これこそバロック!―『ベイビー・オブ・マコン』)
5 ポスト・スクリプト(誰が美術の夏を殺したか―蘇るマニエリスム、一九七七―一九九四)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つまみ食い
2
執筆時点の20世紀末との類似性を指摘しつつ、17世紀のバロック的な文化や芸術のあり方を社会変化(植民地開発の進展や望遠鏡の発展による「世界」の拡大など)とともに論じる。ピーター・グリーナウェイなど現代の映画作家もそのバロック性が指摘され、詳細に分析されている。2021/10/19
あかふく
2
「見る」ことが登録していくこと(species のspec は spectacle と共有されている)であるとすると、本書は高山宏が「登録」してきた書物、しかもエキセントリックな書物たちの図鑑である。ほとんどの章が書物の紹介になっていて、その紹介をしながら統合をも身振りする本書は中で定義される「バロック」をもまた身振りしているのだ。「登録」はまた「記憶」とも関わる以上フランセス・イエイツの諸研究に言及するのも自然だ。そしてイエイツファンのグリーナウェイも同様の観点から論じられる。2014/01/10
四四三屋
0
バロックと聞いても知識の乏しいので、すぐに建築や音楽が思い浮かぶけれどもそれ以上、追求しようとはしてこなかった。しかし著宏は、それこそしつこいくらいにこだわってみせる。そのこだわりが、読者に明らかに<近代>へとつながる重要な転機がバロックに内包されていたということ首肯される。そしてそのバロック的な存在がいかに博物学的であるか、さらにいわば<近代>へと移り変わってゆくなかで洗練されてきた際に捨てられたものを内包するとんでもない空間・世界を夢想・幻想していたことがわかってくる。2014/03/31