内容説明
近代日本の始まりは、日本固有の伝統と西欧文明との衝突であった。「性」をめぐっての、江戸時代からの「色恋」と近代的「恋愛」との出会いも、さまざまな葛藤や悲喜劇を生んだ。それはまさしく、精神史的な転機であり、思想史上の事件であったといえる。その克明な記録である明治期の恋愛小説を読みながら、近代日本初頭の精神の諸相を探る。
目次
序 近代的恋愛観の成立
1 明治前期の恋愛観―北村透谷「厭世詩家と女性」と森鴎外『舞姫』
2 樋口一葉『たけくらべ』
3 二葉亭四迷『浮雲』
4 斎藤緑雨『油地獄』
5 泉鏡花『外科室』『夜行巡査』
6 広津柳浪『黒蜥蝪』
7 国木田独歩『武蔵野』『欺かざる記』
8 有島武郎『或る女』
9 田山花袋『蒲団』
10 岩野泡鳴『耽溺』
11 夏目漱石『それから』