内容説明
3・12後の状況を予見した『原子力都市』の著者が語る、放射能拡散問題のゆくえ。
目次
1 はじまりとしての3・12(「三・一二」公害事件;原子力国家とはなにか;東京の未来;子どもと労働者への「無関心」;国内難民と母親たち;「外国人」としての避難民)
2 放射能測定という運動(放射能測定運動の基礎;検出限界の問題;セシウム134を検出することの意義;セシウムの作物移行を低減させることの問題;国が発表する空間線量の問題;「サンプル」調査の限界;誰が危険にさらされているか;オートポイエーシス的運動)
3 3・12の思想(原子力資本主義、そして“帝国”;原子力のある社会;エコロジーとはなにか;放射能被害と新たなる集団性;世界の原子力体制;科学と魔術;今後、世界といかに接していくか)
著者等紹介
矢部史郎[ヤブシロウ]
1971年生まれ。90年代からさまざまな名義で文章を発表し、社会運動の新たな思潮を形成した一人。人文・社会科学の分野でも異彩を放つ思想家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kentaro mori
2
●いま必要なのは、「運動」のオートノミーをいったん解除して、新しい諸条件に向かって開いていって、オートポイエーシスのプロセスに巻き込まれることなのです。「運動を」再生産するのではなく、「運動の運動性を」再生産する、ということです。2023/10/16
せらむ
0
社会(権力)によって、この「3.12」問題がすでに終わった感じが出されていて、自分もそれに呑まれつつあるのだなぁと思った。それは、福島原発事故時に感じていた緊迫感を、読中に感じたからで、つまり、自分がいまその緊迫感を感じていないということだから。文体が難しくないので、読みやすいと思います。ガタリ「3つのエコロジー」などの考え方も書かれていますが、ガタリよんだことのない自分でも読み進めることができたと思います。魔術の肯定的な捉え方についてが面白かった。2012/10/30
ミズキ
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震災以前から「原子力都市」という著書で原発のクリーンなイメージの異常性を問題視していたからこそ、事故が起こり、実際に放射能がばら撒かれて怒りを抑えることができないのは当然だし、至極正論が書かれている。極端な書き方もあるので、全てを著書の言う通りにしなければ間違っているのかというと(特に避難するしないに関して)そういうことではないと思うが、震災以降の世界を実際に生きていかなくてはならない私達にとって、危機意識が最も高い人の考え方を知っておくのはとても大事な事だと思う。2012/09/24