内容説明
壮大な敗北者・西郷を理想的人格として救抜しなければならなかったわが近代の逆説。「ナショナリズムの暗底」「逆説としての明治十年戦争」「昭和の逆説」など日本近代史の闇を逆照射する刺戟的論稿の集成。
目次
ナショナリズムの暗底
近代天皇制の神話
戦争と基層民
風土と反権力
北一輝問題
北一輝とアジア的共同主義
岡倉天心とその「アジア」
石光真清とその異郷
権藤成卿における社稷と国家
二・二六叛乱覚え書〔ほか〕
感想・レビュー
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マウンテンゴリラ
2
近代に対する違和感は、高度成長を終え、バブル崩壊後の失われた20年を経て、経済、社会、環境、災害等に不安を抱える現在に至って突如として湧き上がったものではなく、明治維新後の当初より問題視されてきた。それを代表する事件、事変が、ニ・二六事件であり、西南戦争であったと言えることを改めて本書から教えられた。維新後150年を超えて今更それに気付くというのは、私だけではなく、多くの日本人、そして多くの知識人にさえ言えることかもしれない。やはり、かくも日本人は時代の空気、集団心理に呑まれやすいのだろうか。→(2)2021/03/31