目次
第1章 ユダヤ人迫害の始まり(ナチス人種政策とユダヤ人の迫害;救援者オットー・ヴァイト)
第2章 オットー・ヴァイト盲人作業所(盲人作業所の開設とユダヤ人の雇用;ナチス政策と「分類」された障害者)
第3章 ユダヤ人は強制労働に従事せよ(救援の舞台ハッケシャー・マルクト;ひとりでも多くのユダヤ人を;盲人作業所の日常とヴァイトの仲間たち)
第4章 強制移送に抗して(迫害から追放へ;匿う者、匿われる者;連れ去られてもなお)
著者等紹介
岡典子[オカノリコ]
福岡教育大学講師、東京学芸大学准教授を経て、筑波大学教授。博士(心身障害学)(筑波大学)。専門は障害教育原論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とよぽん
43
ヴァイト氏のことを紹介した絵本を読んで、なぜドイツ人のこの人がユダヤ人を救う活動をしたのか気になった。ちょうど本書が図書館に新着本として入ってきてラッキーだった。著者は障害教育原論を専門とする日本人の学者。ナチスのユダヤ人迫害は決して独裁政権の暴挙ではなく、国民の支持に基づく暗黙の承認によって実行された。それに対して、ドイツ人の中には暗黒の時代に自らの良心に従って行動した「沈黙の勇者たち」がいた。ヴァイト氏はその中の一人。そして、彼を支え協力し合った仲間の存在が大きかった。人間力が違う!2020/09/15
おはなし会 芽ぶっく
22
ナチス政権下のドイツで、多数の障害者を含むユダヤ人を守るために尽力した盲人オットー・ヴァイト。その名を知るのは初めてです。彼と仲間たちによる救出の記録。過去にももちろん障害を持つ人はいたでしょう。女性・子ども・高齢者に目を向けた本は多々ありますが、障害者へ目を向けた本は、私的には初めてです。自らも盲目という障害を抱えながらも活動した彼と、その仲間『沈黙の勇者』たちの実像が書かれてます。『第一章 ユダヤ人迫害の始まり / 第二章 オットー・ヴァイト盲人作業所 / 第三章 ユダヤ人は強制労働に従事せよ 』2020/09/24
くさてる
15
色々とナチス関係の歴史本は読んできたつもりだけど、このひとのことは初めて知った。自らも視覚に障害を持ちながら、同じ障害者とユダヤ人をナチスの迫害から守ろうと努力し続けたオットー・ヴァイト。この本は、あくまで事実に基づき、その活動を綴ったノンフィクション。とにかく絶望的な状況だったナチ支配下のドイツで、こんなことを続けられたオットーとかれにも協力者がいたことに、ただ圧倒させられた。戦況が悪化するにつれてどんどん緊迫していく時期のあたりは読んでいて苦しいほど。それでも彼はあきらめなかった。読み応えありました。2020/10/03
aoi
3
自らも障害を抱えながらナチス政権下のドイツでユダヤ人障害者を救援した男性とその仲間たちの記録。 ナチスの手を逃れる為に記録が殆ど残っていないのでここに書かれていない様々な人の手も借りていたんだろう、時代背景を知れば知る程あの時代のドイツで「弱者救済」がどれだけ大変だったのかを考え心が痛んだ。 安全で平和な日常が崩れた時、人は何を考えどう行動するのだろうか。人はいつ「弱者」になるか分からない。時代の変化により弱者と強者が入れ替わる事もあるだろう。コロナでどんどん弱者救済に手が回らなくなっていく世界が怖い。 2020/08/18
近藤こたつ
2
「むすび」の言葉がよかった。『加害者が正義ではないのと同じく、被害者、弱者もまた「正義」ではない。』その通りだ。「正義の異邦人」とか「沈黙の勇者たち」とか言われる人々が第三帝国では裏切り者で、今は正義の人なのと同じように、正義なんてものは時代や立場やその人によって変わっていくんだろう。 オットー・ヴァイトのことは初めて知った。自身も障害をもつからこそ救った人。本作の中でも、わかっていないことはけっこう多いようだった。知られていないだけでこういう積極的に助けた人や、間接的に助けた人もたくさんいたんだろうな。2021/09/19