出版社内容情報
非行歴のない子ども、低年齢の子どもによる非行が注目されている。なぜこんな行動を起こすのか、どう対応すればいいか、家庭裁判所などの処理プロセスはどうなっているのか。こうした疑問に一度に答える非行問題の解説書。一般読者から専門家まで必読の1冊。
はじめに
第1章 現代非行と非行臨床
1 現代非行の特質と非行形態の移り変わり
2 非行臨床の焦点
第2章 非行理解のための基礎理論
I 法と制度
1 少年法の理念
2 家庭裁判所の役割
II 非行理解のための心理学
1 精神分析と非行
2 ユング心理学と非行
3 学習理論と認知行動療法
4 家族療法とブリーフ・セラピー
5 ナラティヴ・セラピー
III 非行理解のための社会学
1 非行副次(下位)文化論
2 分化的接触理論(differential association theory)
3 ラベリング論
4 社会統制理論
第3章 非行臨床の新しい視点
1 被害者支援
2 犯罪被害者とトラウマ
3 修復的司法
トピックス 成人性犯罪者処遇の最前線
刑務所での取り組み
保護観察所での取り組み
第4章 非行理解のためのQ&A
■非行とは■
Q1 現代非行の特徴(ネット型いじめ)について教えてください。
Q2 犯罪少年・触法少年・ぐ犯少年とは何ですか?
Q3 少年非行で最も多いものは何ですか?
Q4 校内暴力について教えてください。
Q5 校内暴力について、学校としてはどのように対処すればよいのでしょうか?
Q6 性非行について教えてください。
Q7 薬物非行について教えてください。
Q8 女子非行の特徴について教えてください。
Q9 最近の子どもはキレやすいといわれますが、なぜなのでしょうか?
Q10 小学生の校内暴力とはどのようなものですか?
Q11 チームやギャングと呼ばれている集団とはどのようなものですか?
Q12 非行深度について教えてください。
Q13 家庭裁判所で用いられる要保護性とはどのようなものですか?
Q14 感染性非行と不適応性非行とはどのようなものですか?
Q15 発達障害とはどのようなものですか? また、発達障害と非行の関係についても教えてください。
■子どもが事件を起こしたら■
Q16 警察で調べられた後、どのような手続きになるのですか?
Q17 子どもが事件を起こし、家庭裁判所から呼び出されました。どうなるのでしょう?親と子はどのように準備すればよいのでしょう?
Q18 中学校の教師ですが、生徒が事件を起こしました。教師は、これからどのようなことをすることになるのでしょうか?
Q19 学校における非行の未然防止や組織的対応について教えてください。
Q20 不良グループを抜けたいのですが、どこに相談に行けばよいのでしょうか?
Q21 仲間から万引きをしようと誘われて、断れないでいます。一緒について行くだけでも共犯者になることはありますか?
Q22 子どもを非行に走らせないようにするには、親として、どのようなことに気をつければよいでしょうか?
Q23 非行の兆しはどのようなところに現れてくるのでしょうか?
■事件の流れ■
Q24 家庭裁判所での事件の受理から終局決定までの流れを教えてください。
Q25 家庭裁判所の審判とはどのようなものなのですか?
Q26 保護処分とはどのようなものですか?
Q27 少年鑑別所とはどのような施設ですか?
Q28 中学校教師ですが、少年鑑別所で生徒に会うことはできるのでしょうか?
Q29 未成年なのに刑事裁判を受けることはあるのでしょうか?
Q30 家庭裁判所に事件がかかりました。前科になるのでしょうか?
■保護処分と関係機関■
Q31 少年院とはどのような施設ですか?
Q32 児童自立支援施設とは、どのような施設ですか?
Q33 保護観察とはどのようなものですか?
Q34 試験観察について教えてください。
Q35 児童相談所について教えてください。
■法律問題と弁護士■
Q36 付添人とはどのようなものですか?
Q37 弁護士を付添人につける際の手続きや費用について教えてください。
Q38 責任能力とは何ですか? 重い精神病の人が罪を犯した場合はどうなるのでしょうか?
第5章 事例から学ぶ非行理解
1 事例から学ぶことの意義
2 万引き
3 校内暴力
4 暴走族
5 性非行
6 薬物非行
おわりに
はじめに
近年、少年による凶悪事件が世間の関心を集めている。非行歴のない少年が、突然、凶悪事件を起こす、低年齢の子どもの非行……。最近の非行は理解しがたいという声も多い。本書はこのような声に応えるために企画された非行問題の包括的な解説書である。
非行問題の難しさは二つの側面を含んでいる。一つは、文字どおり内容理解の難しさである。非行そのものをどのように理解すればよいか。なぜ、こんな犯罪が生起するのか。非行に対する対応はどのようにすればよいのだろうか。
このような内容理解の問題に加えて、もう一つは、非行の事件処理手続きの問題である。家庭裁判所を中心とする処理のプロセスは非常に煩雑でよくわからないという声も聞く。
本書は、これらの非行の様々な問題に対して、わかりやすく解説するように努めた。
第1章「現代非行と非行臨床」では、現代非行はどのようなものなのか。また、非行に対する対応をいかに考えればよいのか、という非行理解とその対応の基本を論じた。
第2章「非行理解のための基礎理論」は、「 I 法と制度」「 II 非行理解のための心理学」「 III 非行理解のための社会学」の三つのパートから成り立っている。特に、「 II 」と「 III 」では、非行を理解する上でぜひとも押さえておきたい心理学理論と社会学理論をわかりやすく解説した。ユング心理学、認知行動療法、家族療法、ナラティヴ・セラピー、非行副次文化論、分化的接触理論、ラベリング論等、重要な理論、最新の理論を満載している。このような企画は他書にはない新しい企画であると考えている。
第3章「非行臨床の新しい視点」では、被害者支援やトラウマ、修復的司法といった、非行や犯罪についての新しい考え方を解説した。
第4章は、本書の中核ともいえる「Q&A」である。平易な文章でわかりやすく解説することに努めた。執筆者も非行臨床の実務家、弁護士、研究者など、第一線で活躍するバラエティに富む執筆陣である。
第5章「事例から学ぶ非行理解」では、事例に基づく具体的な非行理解と対応を解説した。
さらに、トピックスのコーナーを設け、成人性犯罪者処遇の最前線として、その処遇を刑務所と保護観察所の二つの立場から紹介した。
このように、本書は、現代非行を理解する上でぜひとも必要な内容をできる限り網羅したと考えている。初学者、一般読者の方が楽しく読める、また、読んでよくわかることを第一に目指したが、内容紹介からご理解いただけると思うが、スクールカウンセラーや教師、また、非行研究者などの専門家にも十分対応できるものになったと自負している。本書が非行問題の理解の一助となることを切に願っている。
村尾泰弘
目次
第1章 現代非行と非行臨床(現代非行の特質と非行形態の移り変わり;非行臨床の焦点)
第2章 非行理解のための基礎理論(法と制度;非行理解のための心理学;非行理解のための社会学)
第3章 非行臨床の新しい視点(被害者支援;犯罪被害者とトラウマ;修復的司法)
第4章 非行理解のためのQ&A(非行とは;子どもが事件を起こしたら;事件の流れ;保護処分と関係機関;法律問題と弁護士)
第5章 事例から学ぶ非行理解(事例から学ぶことの意義;万引き;校内暴力;暴走族;性非行;薬物非行)
著者等紹介
村尾泰弘[ムラオヤスヒロ]
1956年生まれ。横浜国立大学大学院修士課程修了。家庭裁判所調査官として非行や離婚など多くの家庭問題にかかわった後、立正大学専任講師、助教授を経て、立正大学社会福祉学部教授。家族心理士・家族相談士資格認定機構事務局長。認定NPO法人「神奈川被害者支援センター」副理事長。神奈川県青少年問題協議会委員、内閣府「少年非行事例等に関する調査研究」企画分析委員などを歴任。臨床心理士としても活動。専門領域は、非行臨床、臨床心理学、家族心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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