内容説明
女性学/ジェンダー研究とは…「自尊感情の育み」にかかわる理論実践である。それはまた自らの「痛み」を通して社会のあり方に問いをむけるまなざしの深さと、「当事者性」が問われる、とてもスリリングな知的実践である。
目次
第1章 女性学のルーツへ、そして女性問題の現在に
第2章 私の「女性学/ジェンダー研究」教育実践から―「周辺性」の二つの意味
第3章 ジェンダー研究からセクシュアリティ研究への広がりの中で
第4章 田中美津とフェミニズム―からだとエロスとエクリチュール・フェミニン
第5章 「痛み」を棚上げしない思想として―ケアと暴力へのフェミニズムのまなざし
第6章 ジェンダーを再生産する学校―学校文化の中の女子生徒
第7章 ジェンダーフリーな教育がめざしたもの―バックラッシュの中から見えてきたこと
第8章 不安なく異なっていられる社会を―「基本法」の日本的修正を超えて
第9章 ジェンダー・バックラッシュの構図と内面
第10章 「法」の後の、「労働」・「再生産」のゆくえ―不安なく異なっていられる社会からは程遠く
付録
著者等紹介
金井淑子[カナイヨシコ]
横浜国立大学教育人間科学部教授(倫理学、女性学/ジェンダー研究)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒナコ
2
1999年の男女共同参加社会基本法制定以降、顕著に現れた若年女性の主婦回帰願望やリストカットなどの自傷行為を、フェミニズムを誤解し家父長制に尻尾を振る裏切り行為としてみなすのではなく、むしろ、フェミニズムや共同参画社会が必然的にもたらした「写し絵」の一部として正面から捉え、ポスト共同参画社会を志向する挑戦的な作品。 小泉構造改革から始まる格差、不安定就労拡大の中で、共同参画社会が推奨する共働きモデルに労働者/母として耐えきれない周辺的な女性たちが生きる為の安心して「異なっていられる」福祉社会が希求される。2017/12/13
くろなんとか
2
男女共同参画社会はライフスタイルの多様化ではなく、専業主婦型に代わる新しいライフスタイルの強要になりかねない。また、女性への働け圧力と生め圧力が生きにくさに繋がっているというのはよくわかった。しかし、男女が対等の関係を築くにはやはり経済的自立は必要であり、働け圧力や女性役割圧力などに押し潰された結果が少子化なのだろう。そういうことにもっと踏み込んでいく必要がありそう。ただ、ジェンダーフリーバックラッシュの考察は甘い。不十分な説明や早急な変革が不満を噴出させてしまったのではないかという発想が欠如している?2013/12/18