出版社内容情報
2004年の第1回障害学会シンポジウム「障害学とは何か――障害概念の脱構築」と、気鋭の社会学者である石川准と立岩真也の対談を収録。そのほか、障害を切り口に家族、ジェンダー、遺伝子介入、聴者とろう者のコミュニケーションなどを分析した自由論文8編、エッセイ、書評を収載。
創刊の言葉(石川准)
特集 障害学とはなにか──障害学会第1回大会企画から
《シンポジウム「障害」概念の脱構築》
【メイン報告】
「障害」概念の脱構築──「障害」学会への期待(杉野昭博)
【コメント】
杉野「障害概念の脱構築」へのコメント(森壮也)
わかりやすさとあやうさ──杉野報告へのコメント(倉本智明)
《対談》
「見えないものと見えるもの」と「自由の平等」(石川准×立岩真也)
論文
◆遺伝子介入とインクルージョンの問い(堀田義太郎)
◆障害者運動と「新しい社会運動」論(田中耕一郎)
◆障害と身体の「語り」(田中みわ子)
◆「障害児の親」が感情管理する主体となるとき(堀智久)
◆障害者家族の父親のケアとジェンダー――障害者家族の父親の語りから(中根成寿)
◆聞こえる人々の意識変容――手話学習者の語りから(澁谷智子)
◆障害者と健常者、その関係性をめぐる模索――1970年代の障害者/健全者運動の軌跡から(山下幸子)
エッセイ
ユニークフェイスとメディア(石井政之)
情報倫理的ディレンマ(蝙翔武夜)
よくある反省文
創刊の言葉(石川 准)
このたび私たちは『障害学研究』というわれらの学会誌を創刊する運びとなった。
学会発足から早や2年が過ぎ、この危機の時代に、私たちの学会としての歩みは驚くほど牧歌的だと思われている会員もおられるだろう。
障害者自立支援法とか心身喪失者等医療観察法とか、障害者の生活を劇的に変えてしまうかもしれない法が作動し始めた時代に危機感を募らせている当事者は少なくないと思う。
そんなときに小さな小さな学会誌が1冊誕生したことなど、祝福する気分にもならないという会員は決して少なくないであろう。
確かに、いまこの社会は大きく動いている。当事者が覚醒し、語りだし、表現し、動き、主張する一方で、だれもが自由に元気につつがなく暮らせる社会を目指してきた過去から今日に至る無数の人々の有名無名の努力を無にしかねない、一挙に超競争社会へと向かおうとするネオリベラリズムの政治的うねりが強まっている。
しかし、そうした時代だからこそ、私はTo Doリスト(行うべきことリスト)に列挙された事柄の多さに苛立ちや焦りを募らせるのでなく、むしろそのリストをゆっくりと眺め、私や私たちにできることは、これらのなかの収録された諸論稿に通底する問いである。
私たちは言葉を獲得した。経験と感情を形にする言葉である。私たちは論理を携えた。言葉を磨き上げる論理である。
当事者学としての障害学の前途を祝って。
2005年5月10日
目次
特集 障害学とはなにか 障害学会第1回大会企画から―シンポジウム「障害」概念の脱構築(メイン報告 「障害」概念の脱構築‐「障害」学会への期待;コメント;対談)
論文(遺伝子介入とインクルージョンの問い;障害者運動と「新しい社会運動」論 ほか)
エッセイ(ユニークフェイスとメディア;情報倫理的ディレンマ;よくある反省文;「暗闇」と「視覚障害」の狭間で考える―ダイアログ・イン・ザ・ダークの経験から)
書評(C.バーンズ他著(杉野昭博他訳) 『ディスアビリティ・スタディーズ―イギリス障害学概論』
C.パッデン他著(森壮也他訳) 『「ろう文化」案内』)