出版社内容情報
今日まで取り上げられることの少なかったハワイの日本人移民。ハワイ為政者(アメリカ系白人)と日本人移民との間に起こった人種差別事件を、双方の視点から再考する。これまで往々にして「被害者」として扱われてきた日本人移民の姿に、新たな解釈を与える。
刊行の目的および意義
概要
1 ハワイ、そしてグアテマラへ――日本人の移動は人身売買だったのか?
一 はじめに
二 仲介人ファーガソンとその周辺
三 ファーガソンの黒い過去
四 おわりに
2 ハワイ出国の野望――グアテマラへの移動の目的は?
一 はじめに
二 米作の逃亡
三 官吏たちの対応
四 珍田の派遣
五 調査
六 おわりに
3 上陸拒否事件――日本人移民を拒んだハワイ政府の立場から
一 はじめに
二 日本の脅威
三 上陸拒否事件
四 解決に向けて
五 おわりに
4 ペスト予防焼却事件――日本人被災者への賠償問題を追って
一 はじめに
二 火災
三 賠償金の支払い
四 おわりに
5 チャイナタウン・ファイアー――ペストの撲滅に当たったハワイ衛生局の立場から
一 はじめに
二 騒動
三 ペストの再発
四 おわりに
6 亜米利加(アメリカ)丸事件――検疫時の触診検査は凌辱的だったのか?
一 はじめに
二 事件
三 騒動にはしる在ハワイの日本人たち
四 おわりに
あとがき
刊行の目的および意義
これまで、アメリカ合衆国本土、およびハワイへ渡った日本人移民の歴史研究では、日本人はホスト社会で抑圧される「被害者」として綴られることが多かった。
本書は、ハワイの支配層を形成していた、アメリカ系白人と日本人移民とのあいだに起こった人種、人権がらみの事件を、双方の視点から再点検し、これまで往々に「被害者」として扱われてきた日本人移民の姿に、新たな解釈を与えた。扱う時期は、日本人労働者たちが盛んにハワイへ渡航し、それに伴って彼らの存在が人種問題として表面化した一八九〇年代から一九〇〇年代にかけての世紀転換期である。
このハワイ日本人移民の黎明期に関しては、一世たちの研究を最後に、ほとんど手つかずのまま今日にいたっている。その理由は、日本語資料の読解の困難さから、現地ハワイでは後継の研究者が育たなかったことが挙げられる。一方、日本では研究者のほとんどがアメリカ本土の日系人研究に向かった。その背景には、第二次世界大戦時の戦時収容の賠償問題など、一九七〇年代からの政治面の動きとの呼応があった。また本土において、圧倒的多数である白人種との人種問題が、七〇年代の民族解放の風潮のなか、扱う紙、日記、当時の新聞のなかには、これまで史・資料として扱われなかったものが多く含まれている。
目次
1 ハワイ、そしてグアテマラへ―日本人の移動は人身売買だったのか?
2 ハワイ出国の野望―グアテマラへの移動の目的は?
3 上陸拒否事件―日本人移民を拒んだハワイ政府の立場から
4 ペスト予防焼却事件―日本人被災者への賠償問題を追って
5 チャイナタウン・ファイアー―ペストの撲滅に当たったハワイ衛生局の立場から
6 亜米利加丸事件―検疫時の触診検査は凌辱的だったのか?
著者等紹介
山本英政[ヤマモトヒデマサ]
1953年生まれ。独協大学外国語学部教授。アメリカ、ハワイ文化、歴史研究専攻
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