出版社内容情報
自然、芸術、社会から生活、心理まで、無意識の下で人間の営み、現代社会の根幹と密接につながっている「色彩」。本書は、視覚のなかの色彩から歴史上の色彩までを、社会学、文化史、美術史、心理学といった多様な視点から分析し、その魔力を明らかにする。
はじめに(浜本隆志)
序 章 色彩のプリズム(浜本隆志)
第1章 聖なる色・邪悪なる色(浜本隆志)
第2章 青のヨーロッパ――その軌跡を追って(柏木 治)
第3章 黒の横顔――影絵の肖像画(ポートレート)(森 貴史)
第4章 東西美術の光り輝く色彩(中谷伸生)
第5章 色彩と心理(伊藤誠宏)
終 章 色彩のカノン(規範)は死んだか?(伊藤誠宏・浜本隆志)
あとがき(伊藤誠宏)
索引
あとがき
街の色について調査し尋ねたことがあった。京都を色でイメージしたら何色か? 大阪の街の色は? 京都は、落ち着いた渋いトーンの色、大阪は派手で、はなやいだ、明るい色をイメージする人が多かった。
神戸は、山の緑、海の青を基調にしたソフトで明るい色が街のイメージカラーであった。ところが、一九九五(平成七)年に起きた、阪神・淡路大震災以降、人びとが感知する神戸の街の色は、多様で広範囲に及び、街の共通したイメージカラーが得られないと聞く。
震災時の神戸の状況が人びとに語りかけてくるもの、それを受け止める人びとの複雑な思い、嘆き、後悔、不安、絶望などが交錯する。この人びとの気持ちが、街に対する意識の多様さを生み、神戸の街に対する個別的色合いを強める。それが微妙に色にあらわれ、街の共通したイメージカラーの構築をむずかしくしているのであろう。つまり、神戸を見る人は、その人の思いを投影して神戸の街を見るため、複雑で微妙な、共通性を欠く、街のイメージカラーを抱くのである。このように街の色のイメージは、住んでいる人びとの意識を映し出したものであることがわかる。その際重要なことは、色を意識的に見るという行為である間のつながりを考慮した面もある。
一方、色と人間のかかわりを考えると、現代社会だけでなく、過去にさかのぼって考えなければならない。人間の歴史は、色彩との関係史といえなくはない。過去の色彩の歴史を考察する場合にも、意識的に色彩を見るという行為は必要であろう。わたしたちは、社会学、文化史、美学の観点からも色彩の考察を展開した。このような多角的視点から、色彩を論じた著作があまりみられないだけに、わたしたちは、それなりに意義ある著書ができたのではないかと思っている。
本書により、読者の皆さんが色彩に関心を抱き、色彩に対する認識を深める一助になれば幸いである。(後略)
目次
序章 色彩のプリズム
第1章 聖なる色・邪悪なる色
第2章 青のヨーロッパ―その軌跡を追って
第3章 黒の横顔―影絵の肖像画(ポートレート)
第4章 東西美術の光り輝く色彩
第5章 色彩と心理
終章 色彩のカノン(規範)は死んだか?
著者等紹介
浜本隆志[ハマモトタカシ]
1944年、香川県生まれ。ワイマル古典文学研究所、ジーゲン大学留学。関西大学文学部教授。ドイツ文化論専攻
伊藤誠宏[イトウマサヒロ]
1942年、京都府生まれ。関西大学文学部教授。フランス語学専攻
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