出版社内容情報
「68年革命」とは何か――。運動の核心と可能性を徹底的に語り尽くした、同名の映画のインタビューを全て収録。
運動の理論的支柱を担った思想家・論客に、当時の理論的背景、社会状況、彼らの個人史などを聞くことにより、運動の限界と可能性を検証し、21世紀の現在における社会変革に有効な運動を模索。膨大かつ詳細な注釈・年表、当時の写真でさらに明解に位置づける。
映画は共産主義に似ている(スガ秀実)
序章 スガ秀実 今なぜ「68年革命」なのか
小ブル急進主義であること/今もなお進行している「革命」
第1章 松田政男 日共体験・直接行動・第三世界
ニューレフトの誕生/主体性論争とモラリスト論争/“やる”という動詞の原形/疎外革命論の批判と第三世界論の導入/“68年”は革命か反革命か
第2章 西部邁 綱渡りの平衡棒を求めて――ブントからコンサバへ
グローバリズムとインターナショナリズム/マルクス経済学と宇野経済学/詩的なアジテーションと散文的な結果/六〇年安保――センチメンタル・ジャーニー/大衆批判のほうへ/左右両翼の綱の上で/アメリカ的なるものについて
第3章 柄谷行人 整体としての革命
アナーキズムに対する親和性/ブントと宇野経済学/実存とシンギュラリティ/代表制とくじ引き/共産党に対して/「赤い太陽族」と大衆社会/心の問題とシステムの変更
第4章 津村喬 身体の政治性/政治の身体性
70年7・7という日本思想史のターニングポイント/マイノリティ問題の位相/成り代わり糾弾=代行という問題/フォルマリスムとしての毛沢東主義/身体存在という政治性/自
井土紀州 『LEFT ALONE』製作ノート
映画『LEFT ALONE』の構想は、二〇〇〇年の夏に熊野大学でスガ秀実氏と出会ったことがきっかけで始まった。全くどんな映画になるのか想像もつかなかったが、プロデューサーの吉岡文平と私は未知の企画に興奮し、早速実現の方向にむかった。当初はスガ氏だけでなくこの企画全体に鎌田哲哉氏も参加してもらう予定で、その年の十一月には鎌田氏とスガ氏の対話を撮影した。この対話は主に「花田・吉本論争」を巡るものだったが、その後、鎌田氏はスガ氏の六八年革命論にもニューレフトの歴史にも本質的に興味を持てないという理由からその後の撮影への参加を取りやめた。この十一月の撮影は本当に手探り状態で、被写体であるスガ氏や鎌田氏をどう撮影していいのか、私たちは全く把握できていなかった。二台のカメラを使用したのだが、一台は二人の人物を同じ画面に捉え、もう一台はスガ氏を撮っている。つまり、鎌田氏の顔をアップで捉えておらず、そのことが原因で後の編集作業ではかなり苦労することになった。
その後、私たちは二〇〇一年五月に東大駒場寮で開催された学生運動に関するシンポジウムに参加するスガ氏の姿を撮影したり、三月にはスガ氏がへのインタビューは、ニューヨークの世界貿易センタービルが崩落した九月十一日の三日後に行なわれた。新宿にある西部氏の事務所にお邪魔しての撮影は、西部氏の巧みで淀みない話術に聞き惚れているうち、あっという間に終わってしまった感じだったが、「西部さんの共産党体験と、その後ブントに行った経緯を聞かせてください」という私の不躾な質問に対して、西部氏がそれまでかけていた眼鏡を外し、私を見つめながら真摯に答えてくれたことは今も忘れられない。また、この撮影で、ちょっとした表情の変化も見逃さないように西部氏の顔を一台のカメラが常に追い、もう一台でスガ氏を追うというやり方が確立した。
同じ年の十二月十五日には、私と吉岡、そして撮影を担当した伊藤学や高橋和博も学生時代に自主管理運動に関わった法政大学の学生会館に柄谷行人氏を迎えて撮影が行なわれた。柄谷氏の話し方は独特のリズムを持っており、次の言葉が出てくるまでに一瞬の沈黙がある。その沈黙の間のヒリヒリとした緊張感。本来なら、その沈黙を埋めるようにして言葉を発していくはずのスガ氏も言葉を飲み込むようにして沈黙する。そんな沈黙の時間が印象に残る撮影だった。また、映画第一部の冒頭で使た私たちは、その後、長い編集作業の過程に入った。膨大な対話の記録を前に、私たちは正直なところ何度も途方に暮れた。仮説を立て、それを検証する、そんな行為の繰り返しだった。だが、何度も試行錯誤を重ねるうちに、次第に映画の構造が見えてきた。そして、二〇〇三年五月一〇日、映画と連動する形で進めてきた雑誌『重力02』の刊行を機会に、御茶ノ水のアテネ・フランセ文化センターで上映イベントを行い、パイロット版を上映することになった。
パイロット版上映後に出た様々な批判や批評を受け止めながら、いかにして映画を完成させるかを模索していた私たちの前に登場したのが花咲政之輔氏である。まず、花咲氏が主催する太陽肛門スパパーンの音楽と出会った私たちは、花咲氏に映画の音楽を依頼し、同時に、映画への出演も依頼した。早稲田のサークルスペース移転阻止闘争を中心的に闘った花咲氏に出演してもらうことで、映画が現在に開かれたアクチュアリティーを獲得できると確信したのだ。
二〇〇四年十一月、新たに撮影したパートをパイロット版に織り交ぜる形で、映画『LEFT ALONE』は完成した。そして、パイロット版上映後に起きた大きな動きのひとつが、本書の企画である。
目次
序章 今なぜ「68年革命」なのか(〓(すが)秀実)
第1章 日共体験・直接行動・第三世界(松田政男)
第2章 綱渡りの平衡棒を求めて ブントからコンサバへ(西部邁)
第3章 整体としての革命(柄谷行人)
第4章 身体の政治性/政治の身体性(津村喬)
第5章 ニューレフトの行方(花咲政之輔)
著者等紹介
〓(すが)秀実[スガヒデミ]
1949年生まれ。文芸評論家。近畿大学国際人文科学研究所教授
井土紀州[イズチキシュウ]
1968年生まれ。映画監督、脚本家
松田政男[マツダマサオ]
1933年生まれ。映画評論家
西部邁[ニシベススム]
1939年生まれ。評論家。「発言者」主幹。秀明大学学頭
柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年生まれ。評論家。近畿大学国際人文科学研究所所長
津村喬[ツムラタカシ]
1948年生まれ。評論家。日本健身気功協会理事長兼事務局長
花咲政之輔[ハナサキマサノスケ]
音楽集団「太陽肛門スパパーン」主宰
上野昂志[ウエノコウシ]
1941年生まれ。評論家
丹生谷貴志[ニブヤタカシ]
1954年生まれ。評論家。神戸市外国語大学教授
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