比較外交政策―イラク戦争への対応外交

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 323p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784750320113
  • NDC分類 319
  • Cコード C0031

出版社内容情報

イラク戦争に関わる主要各国の外交政策の形成過程を、パワー・イメージ・アプローチを用いて分析した斬新な比較外交政策論。超大国アメリカとの関係をめぐって展開された、「もうひとつのイラク戦争」の意味を同時代的に照射する。

第1章 序論(櫻田 大造/伊藤 剛)
 2003年イラク戦争の様相
 邦語での主要イラク戦争研究
 比較外交政策論の先行研究
 外交政策分析の枠組み
 「国益」と「成功」の定義
 政策決定「単位」とアリソンによる第3モデル
 対応政策の類型化
 外交政策スタイルや「過程」の類型化
 本書における対象国の選定
 本書の構成
第2章 小泉政権の対応外交(丸楠 恭一)
 はじめに
 イラク戦争前の対米外交
 開戦前の国内状況と開戦時対応に向けての政策過程
 イラク戦争勃発後の動向と国内世論の反響、対米関係への余波
 政策決定要因
 おわりに――満たされたようで満たされない「国益」
第3章 シュレーダー政権の対応外交(新谷 卓)
 はじめに
 欧米関係分断の構造的位相
 総選挙とイラク戦争不参加表明
 開戦前までの国内状況
 開戦前のシュレーダー外交
 開戦後シュレーダーの緊張緩和政策
 おわりに
第4章 シラク政権の対応外交(鳥潟 優子)
 はじめに
 2003年1月の政策転換をどう説明するか
 「力と法の均衡」というテーゼとフランス外交
 湾岸戦争から国連決内状況
 開戦直前の国内状況
 開戦後の状況
 派遣以後の展開
 おわりに――外交政策の評価
第7章 胡錦濤政権の対応外交(伊藤 剛)
 はじめに
 背景としての「エネルギー安全保障」
 米中関係とイラク戦争における中国の「国益」
 中国政府のイラク戦争への対応
 対応外交の評価
 おわりに
第8章 クレティエン政権の対応外交(櫻田 大造)
 はじめに
 イラク戦争前のカナダの対外行動
 クレティエン首相による政策発表
 開戦前のカナダ国内での反戦論
 イラク戦争の勃発とカナダ情勢
 加米関係への余波
 なぜカナダは参戦しなかったのか
 クレティエン自身の政策決定要因
 おわりに
第9章 結論(櫻田 大造/伊藤 剛)
 主要7カ国の対応外交の比較
 パワー・イメージ・アプローチによる外交スタイルの類型化
 「国益」達成度をどのように評価するか
 外交政策決定単位
 対応外交の類型化――内政と外交の交錯
 今後の課題
あとがき
編者・著者紹介

序 論
2003年イラク戦争の様相
 2003年3月17日に、アメリカのブッシュ(George W. Bush)大統領は、イラクのフセイン(Saddam Hussein)大統領に対して、実質上最後通牒となる演説を実施する。その内容は、フセインに対して、48時間以内にイラクを去り、政権を自主的に放棄することを義務付けていた。この演説はまた、国際連合により、その時まで継続していた、イラク保有の大量破壊兵器(WMD)査察努力に対して、時間切れを宣告する働きも持っていた。
 実際、3月18日には、国連査察団がイラクから出国し、緊張は更に高まっていく。そして、3月20日には、米英軍主導のイラク侵攻作戦により、イラク国内の戦略拠点爆撃が開始された。ブッシュ大統領の正式開戦演説は、既に前日夜実施されており、20日夜には、イギリスのブレア(Tony Blair)首相による参戦声明も発表された。米英を中心とする有志連合によるイラク戦争はこのようにして勃発したのである。
 イラク戦争自体は、比較的短期間で終了した。米英軍は、地上侵攻作戦を経て、4月14日にはイラク全土を制圧し、フセイン政権を打倒したと発表。5月1日には、ブッシュ大統領が戦闘終結宣言を実施しては「テロリストと結託して、世界の平和を脅かすために武装している」脅威として、「イラン、イラク、北朝鮮」を名指しで、「悪の枢軸」に指定して非難した。
 「悪の枢軸」への具体的な戦略は、2002年9月に発刊された「国家安全保障戦略」(ブッシュ・ドクトリン)で具現化される。この内容は、「アメリカの正義」により各国のテロリズム支援度を判定すると同時に、米国本土への攻撃を防ぐための「先制攻撃」が正当化されていた。この先制攻撃論は、将来攻撃される可能性がある潜在的脅威が顕在化する前に、敵対的アクターを殲滅するという「予防戦争」につながりかねなかった。その背後にあるエトスには、体制転換を武力的方法によって実現させ、ひいてはアメリカ流の民主主義化推進を目的とする政権内の新保守主義(ネオコン)派の思考が色濃く出ていた。
 その後、ブッシュ政権は、国連安全保障理事会で、イラク攻撃を正式認定する「第2の決議案」を模索したが、結果的には失敗。国連のお墨付きのないままに、国際法上「違法」と認定されかねない対フセイン武力行使に踏み切ることになった。このように、イラク戦争はブッシュ・ドクトリンの適用例という側面も併せ持つ。
 国際連く批判することを控えるようになり、イラク戦争にはむしろ実質的に「容認」の態度を取るようになった。
 世界各国に大きな衝撃を与え、昨今の国際事件でも極めて重要だったのが、イラク戦争であった。ところがその問題点を整理し、なおかつこの戦争をめぐる主要国の対応を、理論的に明らかにした邦語研究は、十分とは言いがたい。
 (中略)
 本書は、日本におけるイラク戦争関連の先行研究を踏まえて、国際システムにおける「主要国」の対イラク戦争外交の全貌を明らかにすることを、その目的のひとつとする。更に、それらの諸国の政策決定過程や当時のマスメディアでの論調を解析することで、当事国にとっての「イラク戦争の意味」を同時代史の文脈から問い直す。その際、政策決定者の立場から捉えた「国益」の概念を使用することで、対応外交の「成功度(「国益達成度」)」にも一定の判断を下したい。本書の最後の目的は、国際関係論のサブフィールドである比較外交政策論にも、一定の貢献をすることである。(後略)

目次

第1章 序論
第2章 小泉政権の対応外交
第3章 シュレーダー政権の対応外交
第4章 シラク政権の対応外交
第5章 ブレア政権の対応外交
第6章 ベルルスコーニ政権の対応外交
第7章 胡錦濤政権の対応外交
第8章 クレティエン政権の対応外交
第9章 結論

著者等紹介

桜田大造[サクラダダイゾウ]
1961年長野県生まれ、シアトル大学教養学部政治学科及び上智大学外国語学部英語学科卒、トロント大学大学院修士課程政治学科修了、博士(国際公共政策、大阪大学)。徳島大学総合科学部助教授、ニュージーランド戦略研究センター研究員等を経て、現在、関西学院大学法学部教授

伊藤剛[イトウゴウ]
1966年高知県生まれ、上智大学大学院外国語学研究科国際関係論専攻博士前期課程修了、デンヴァー大学大学院国際関係学部博士課程修了(国際関係論、Ph.D.)。日本国際フォーラム研究員、明治大学専任講師を経て、現在、明治大学政治経済学部助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

DonaldTrump

0
イラク戦争前後の、日本やフランス、ドイツ、イギリス、イタリア、ロシアなどのG8諸国がどういうプロセスを経てどういう行動をとったのかについて詳しく書かれた名著!2007/02/22

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/300257
  • ご注意事項