サンボ―アメリカの人種偏見と黒人差別

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 390p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750319384
  • NDC分類 316.853
  • Cコード C0036

出版社内容情報

米国の歴史のなかで浮かんでは消え、消えては浮かぶ黒人像・サンボ。白人社会の黒人に対する根深い蔑視に特徴づけられるサンボの変遷を歴史・社会・文化の多様な側面から追跡する。

1 時間を逆転させた墓碑銘
2 名の通り
3 皆様すこしお静かに。アメリカが生んだ初めてのエンターテイナー・サンボをご紹介します!
4 舞踏場でもサーカスでも、劇場、ピクニック、教会、学校、刑務所でもへこたれることのない元気いっぱいの、笑いを絶やさないジム・クロー様をご紹介いたします!
5 肉太活字の印象
6 色彩豊かな投影
7 カメラの目
8 ラジオの耳――おかしな二人の親類
9 解放主義者としてのおろかもの


訳者あとがき

写真
索引

訳者あとがき
 本書はJoseph BoskinのSambo: The Rise & Demise of an American Jesterの全訳である。
 本書は一九八六年に初版がオックスフォード大学出版局から出されている。他民族に対する偏見と差別の根源を究める上で新しい方法論を提示しているとして高い評価を得ている。偏見が日常的な笑いの中で形成される過程をきめ細かく分析している。
 著者のボスキン氏はアメリカのボストン大学教授で、歴史学研究者であるが、特にアフリカ系アメリカ人に興味をお持ちである。アメリカ文化におけるアフリカ系アメリカ人の果たした役割、特に笑いの文化について造詣が深い。ボスキン氏はニューヨーク州立大学を卒業したあとニューヨーク大学で修士号を取得、その後ミネソタ大学で Ph.D を取得している。ミネソタ大学、アイオワ大学、南カリフォルニア大学などで教えた後ボストン大学教授となり現在に至っている。多くの論文、記事を書き、新しい切り口のもとに研究を深めると同時に啓蒙にも力を注いでいる。主な著書にはRebellious Laughter『反抗的な笑い』、Humor and Social Change in the Twentieth Century『二十世紀におけるユーモアと社会変化』、Into Slavery『奴隷へ』、An Oppenheあるのであろう。黒人差別などの問題をわれわれの身近な問題と結び付けて読んでいただけると差別の本質を理解する上で役立つと思われる。ことばの問題としては他の表現形式に変えることによって差別の本源となることの本質の捉え方を見直している。表現を変えたというのは表面的なことばの問題ではなく、本質の捉え方を見直した結果出てきたことであろう。アメリカでは黒人を表す一般的なことばであったnegroとかniggerなどは現在の辞書でtaboo slang 「俗語で禁句」と表記されている。
 差別そのものや差別的用語法を廃止することに賛成する日本人でも「サンボ」についての意見が分かれることがある。私は何人かの母親に「ちびくろサンボ」について感想・意見をお聞きした。「ちびくろサンボ」のどこが差別的なのか、とする意見が案外根強い。日本の桃太郎の鬼退治物語と変わらないのではないか、子供に勇気というものを教えることができる良い本だ、とする意見を述べた母親もいた。インターネット上でもサンボ復活論が出されているぐらいである。数社から出ていた『ちびくろサンボ』の巻末には解説としてちょっとした文章が児童文学者、評論家、出版関係者、翻訳者などによって書かれている。そまる。ことばは通じない、文化、宗教は全く認められない。そのような生活の中で故郷の歌と踊りが唯一の楽しみだったことであろう。その才能を白人は自分らの娯楽として利用したのだった。白人といえども都会からはるかに離れた大農場では娯楽といえるほどのものは全くない時代である。そのうち娯楽専用の奴隷が誕生するようになる。その辺のところを著者は丁寧に跡付けている。
 黒人の娯楽性について著者はもう一つの要素を上げている。黒人の明るさである。笑い、所作、歌、踊りが一体となっている。苦痛というべき昼間の労働のあとでも活き活き歌い、踊り、笑うのは黒人の天性であり、その子供じみた底抜けの明るさは「知能の低さ」から来るもの、と白人の偏見は確信へと発展する。ステレオタイプ化(固定観念化)が形成される過程を著者は克明に追っている。その固定観念化が偏見・差別へと発展する。実はここ数年にわたって日曜日の夜に放映されているある娯楽番組があるが、その番組に三人の黒人が出演している。三人の黒人の出演の目的は「笑い」を取るためである。日本語がまだ十分でない(ように思われるが)ためか、言い間違えることが多いが、笑いは単に言い違いで取るのではなく、それ

目次

1 時間を逆転させた墓碑銘
2 名の通り
3 皆様すこしお静かに。アメリカが生んだ初めてのエンターテイナー・サンボをご紹介します!
4 舞踏場でもサーカスでも、劇場、ピクニック、教会、学校、刑務所でもへこたれることのない元気いっぱいの、笑いを絶やさないジム・クロー様をご紹介いたします!
5 肉太活字の印象
6 色彩豊かな投影
7 カメラの目
8 ラジオの耳―おかしな二人の親類
9 解放主義者としてのおろかもの

著者等紹介

ボスキン,ジョセフ[ボスキン,ジョセフ][Boskin,Joseph]
アメリカ・ボストン大学歴史学教授

斎藤省三[サイトウショウゾウ]
前東海大学講師、武蔵野外語専門学校講師。上智大学卒業後、中・高等学校の英語教師を経て、カリフォルニア州フンボルト大学に留学・中退。アメリカ・インディアンの家族と認められる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。