出版社内容情報
コロンブスの新大陸発見後、欧州の植民地支配に始まり現在に至るまでの歴史を詳解する。支配する側だけではなく支配される側にも焦点をあてて、様々な角度から500年の歴史を描き出した、ブラジルの高等学校で最も使われている歴史教科書の全訳。
一 植民地期
1 ピンドラーマ――原始共同体と先植民地期
2 黒人の地獄――砂糖生産と16~17世紀の植民
3 トルデシーリャス条約の分割線を越えて
4 金への渇望は止まない
5 何を考え、何を語るのか――18世紀末の反逆事件
6 宮廷が移転した――独立への歩み
二 帝政期
1 ペドロ4世の座を待つより、ペドロ1世になる方が得だろうか
――第1帝政 1822~1831
2 中央集権と地方分権の相克
――摂政制の危機と帝国の確立 1831~1850
3 ブラジルとはコーヒーのことである
――帝政最盛期の政治・経済・社会 1850~1870
4 落下(デグリンゴラーダ)
――君主政の衰退と共和国宣言 1870~1889
三 共和政期
1 大農園主たちの共和国
――オルガルキー共和政の形成と確立 1889~1920
2 これはわれわれが夢見た共和国ではない
――オリガルキー支配の危機と1930年革命
3 「新国家(エスタード・ノヴォ)」
――ヴァルガスの独裁体制 1937~1945
4 「国民は私とともに登るであろう」
――ポプリズモ国家の矛盾と葛藤 1940~1964
5 権威主義体制―
(前略)
本書の意義を考えるにあたっては、初版刊行当時のブラジルとラテンアメリカを取り巻いていた政治的・経済的・社会的情勢を想起しなければならない。1979年当時、ブラジルをはじめ、アルゼンチン、ウルグアイ、チリといった南米の主要国は軍事政権下に置かれていた。一方、中米ニカラグアではサンディニスタの革命政権が樹立され、その後の長い泥沼の中米紛争が始まろうとしていた。ブラジル国内では、この年の1月、軍政最後のフィゲイレード大統領が就任するにあたって、悪名高い軍政令第5号が廃止され、民主化への第1歩が踏み出された。しかし、早くも3月には、サンパウロ大都市圏の金属労組による大規模なストに対し、厳しい弾圧が加えられ、民主化の前途多難なことを予想させた(この時のストを指導したのが、2003年1月1日に就任した新大統領ルーラである)。
この意味で、本書は、民主化過程の1つの証言としても読むことができるであろう。軍政下で青春時代を送り、当時30代を迎えたばかりの著者たちの鋭い時代感覚は、本書と無縁ではないはずである。教科書といえども1つの作品であると考えれば、本書に垣間見られるマルクス主義歴史学の影響もまた、ブラジルの青年たちの歴史意識
目次
1 植民地期(ピンドラーマ―原始共同体と先植民地期;黒人の地獄―砂糖生産と16~17世紀の植民;トルデシーリャス条約の分割線を越えて―17~18世紀における領土の拡大 ほか)
2 帝政期(ペドロ4世の座を待つより、ペドロ1世になる方が得だろうか―第1帝政 1822~1831;中央集権と地方分権の相克―摂政制の危機と帝国の確立 1831~1850;ブラジルとはコーヒーのことである―帝政最盛期の政治・経済・社会 1850~1870 ほか)
3 共和政期(大農園主たちの共和国―オルガルキー共和政の形成と確立 1889~1920;これはわれわれが夢見た共和国ではない―オリガルキー支配の危機と1930年革命;「新国家」―ヴァルガスの独裁体制 1937~1945 ほか)
著者等紹介
アレンカール,シッコ[アレンカール,シッコ][Alencar,Chico]
1951年リオデジャネイロ市生まれ。フルミネンセ連邦大学(UFF)歴史学科卒、ジェトゥリオ・ヴァルガス経営大学(FGV)大学院(教育学)修了。リオデジャネイロ連邦大学教授等を経て、リオデジャネイロ州議会議員。2003年1月より連邦下院議員(労働者党PT)
カルピ,ルシア[カルピ,ルシア][Carpi,L´ucia]
リオデジャネイロ市生まれ。フルミネンセ連邦大学(UFF)歴史学科卒、同大学院(歴史学)修了。リオデジャネイロ州立公文書館勤務等を経て、現在リオデジャネイロ市内の私立中高校で教鞭をとっている
リベイロ,マルクス・ヴェニシオ・トレード[リベイロ,マルクスヴェニシオトレード][Ribeiro,Marcus Ven´icio]
1948年ミナスジェライス州バルバセーナ市生まれ。フルミネンセ連邦大学(UFF)社会科学科卒、同大学院(歴史学)修了。現在国立図書館出版部コーディネータのかたわら、リオデジャネイロ市内の私立中高校で教鞭をとっている
東明彦[アズマアキヒコ]
大阪外国語大学外国語学部助教授。日本ラテンアメリカ学会会員、日本ポルトガル・ブラジル学会会員
イシ,アンジェロ・アキミツ[イシ,アンジェロアキミツ]
ブラジル、サンパウロ市生まれ。国費留学生として来日し、新潟及び東京大学大学院を経て、ポルトガル語新聞の編集長に就任。現在、武蔵大学、東京外国語大学他で非常勤講師
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姉勤
ユビヲクワエルナマケモノ