内容説明
法然の念仏の伝統を受け継ぎ、「南無阿弥陀仏」の名号に意味を見出した一遍。純他力といわれるその念仏信仰を、衣食住と家族のすべてを捨て、全国を遊行して歩く姿に発見。「一遍聖絵」を通して、捨てる思想を考える。
目次
私の一遍
1 一遍の魅力
2 一遍の生涯―念仏と遊行の聖者
3 念仏が念仏を申す信仰―阿弥陀仏と名号
4 日本全土への遊行と賦算―捨聖と呼ばれた意味・時衆を引き連れた意味
5 踊り念仏の開始と展開―一遍と時衆におけるその意義
6 神祇信仰の重み―神社と寺院
7 絵巻物のなかの一遍―『一遍聖絵』に見る一遍の遊行
8 現代に生きる一遍
著者等紹介
今井雅晴[イマイマサハル]
1942年東京都に生まれる。1977年東京教育大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、筑波大学歴史・人類学系教授
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感想・レビュー
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浅香山三郎
9
吉川弘文館「日本の名僧」シリーズの1冊。同じシリーズで以前、空也を読んだことがある。一遍研究の大家の基礎的な論考と比較的若手・中堅の研究者のものを収める。一遍自身に関する一次史料は少なく、「一遍聖絵」などの絵巻物や時衆教団が後世にまとめたものに依拠する点が大きいことなど、一遍研究の見取り図を知るには適切。一遍と阿弥陀如来を本地仏としてゐた日本の神々との関係が面白い(中世的)だと感じた。一遍の念仏信仰とそれ以外の念仏者とのスタンスの違いも比較されてをり、よく整理出来たやうな気がする。2017/01/06
moonanddai
6
考えてみると一遍と日蓮はほぼ同時代を生きたのですね。つまり「蒙古襲来」の日本に生きた。この蒙古来襲という事件は、私としては今まで(教科書的に)政治的、外交的な影響ばかりがあったものと思っていたのですが、実は時の民衆などに与えた心理的影響といったものも相当あったのだと、改めて感じました。そのような世相であったから、日蓮のエキセントリックな行動や、一遍の「集団的エクスタシーによる忘我」につながる踊念仏なども理解できるような気がします。2022/08/15
つばな
1
仏教史上での一遍の意義、その生涯を知る上では分かりやすくよい。学術的考察も多角的な論説を載せていてよいかと。ただやはり思想面への切込みが少ない。一遍を神格化しすぎず、その思想に迫る著作がなかなかないなあー2010/11/15