内容説明
国家が国民に強制する兵役義務=徴兵制は、わが国の国民と社会にどのような影響を与えたのか。徴兵令制定から兵役法廃止まで七十余年の度重なる改変過程と軍部・政府間の攻防をたどり、日本近代国家の特質を抉出する。
目次
1 武士のなにが問題だったのか
2 徴兵制確立前の兵制
3 徴兵制導入にあたっての論理と兵士の数
4 フランス・ドイツの影響
5 大日本帝国憲法成立まで
6 憲法と徴兵令
7 帝国議会での攻防
8 第一次大戦の影響
9 日中戦争期の兵役法
10 太平洋戦争期の兵役法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
棕櫚木庵
22
1/3) 話が細かく,全体を把握・要約するのは私の手に余る(^^;).また,法律文書の引用が多く,契約書を丁寧に読む時の鬱陶しさみたいなものも感じたりもした.しかし,(あたりまえのことだけど)徴兵制とは国家設計の根幹にかかわることだってことはよく分かったし,興味深い事例・指摘が多数あり,付箋だらけになってしまった.特に,“帯刀・帯剣”することの二面性(特権階級あるいは独立した市民であることの証 vs 自由を束縛され人を殺し殺されることを強いられる苦役)に係わる事例が興味深かった.そのいくつか:2023/01/20
ミッキー
2
戦争が相手の社会規範の書き換えだと捉えると、徴兵制がいびつに運用された国の規範の限界が分かるように思いました。その時代の規範に強いられて行動したと言う認識を持つことが反省を行う第一歩かもしれません。とても参考になりました。2017/03/27
フルボッコス代官
1
徴兵システムを徴兵令・兵役法という法律から検討し、論述している書。著者の加藤のもつ反戦左翼思想から、否定的な文面がにじみ出ているが。それを置いておくとしても、法律の変遷と議会等でのやりとりをよく示している点は評価できる。2020/09/25
shouyi.
0
これまで加藤陽子さんの本を何冊か読んできて、どれもおもしろかったが、今回はちょっと飽きてしまった。 徴兵制度の歴史を追う試みは興味をひかれたし、単純により多くの人間を兵士にする為の制度ではなかったというのは発見でもあったが、総じて平板な展開であったためだ。2017/12/13
mdsch23
0
明治維新後の徴兵制について法律改正や制度の見直しのやりとりからどのような意図があったのか分析をされている本。要点は最後にまとめられていますが国を富ませる為に教員や大学進学者の徴兵猶予・除外していた制度が軍によって崩されたというのは当たらず「不幸の均霑」が最終的に学徒動員に到っている。建前としての国民皆兵とその実態としての低い徴兵率(陸軍にとっては母集団は大きくして、その中で兵士を選抜し更に下士官を選ぶという事を望んでいた)と徴兵者と家族の負担の大きさや特権に見える猶予者の問題が負の感情を蓄積した印象強い。2014/10/11