出版社内容情報
明治以降の日本に存在するふたつの憲法。他国では頻繁に改正しているにもかかわらず、大日本帝国憲法は57年、日本国憲法は今日まで70年以上、1度も1文字も改正することがなかった。戦前の「不磨ノ大典」と改憲論、戦後の革新護憲・保守改憲・解釈改憲の歴史から、日本人の憲法観に迫り、国家運営への影響を明らかにする。いま必読の1冊。
内容説明
明治以降の日本に存在するふたつの憲法が、これまで一度も一文字も改正されなかったのはなぜか。戦前の「不磨ノ大典」と改憲論、戦後の革新護憲・保守改憲・解釈改憲の歴史から、日本人の憲法観に迫る、いま必読の書。
目次
日本人にとって憲法とはなにか―プロローグ
不磨ノ大典
高度国防国家
戦時体制
戦後日本の憲法観
近代日本の憲法観―エピローグ
著者等紹介
川口暁弘[カワグチアキヒロ]
1972年、静岡県に生まれる。2000年、学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻博士後期課程中退。現在、北海道大学大学院文学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
4
明治以来の日本の憲政史は「護憲」と「解釈改憲」の歴史であったことを論じる。明治憲法下での憲政が「天皇超政」と「天皇親政」の間で揺れ動いたこと、現在の日本国憲法も「押し付け」と言われつつ昭和天皇のお墨付きを経ていること、「解釈改憲」によって天皇の元首化が事実上達成されていることを鑑みると、日本の憲法で鍵となるのは軍隊ではなく天皇の扱いではないかという気がするが…2017/08/07
佐藤丈宗
3
ふたつの憲法をみるとき、やはりキーワードになるのは「護憲」「改憲」そして「解釈改憲」。本書はあくまでも歴史を追い、その是非を論じているものではない。明治憲法は理念(天皇親政)と現実(天皇超政)の均衡によって成り立っていた。明治天皇の欽定憲法という権威によって「不磨の大典」化され、護憲以外の道を閉ざしたとき、理念と現実のバランスが崩壊し、力を失った。現在の日本国憲法はどうだろう。なぜ解釈改憲という現実があるのか。護憲ありき、改憲ありき論だけで憲法を議論することが、いかに憲法を危ういものにしてしまうのか。2017/08/24
Miki Shimizu
2
歴史小説のような感じ。はじめはワクワク楽しく読んでたけど、登場人物が多すぎて、名前の読み方も難しくて、だんだんしんどくなってきた。2024/04/13
Ohe Hiroyuki
2
大日本帝國憲法も日本国憲法もいずれも一文字たりとも改正されていないのはなぜかについて論じる一冊である。▼改正されなかった背景に憲法を「不磨の大典」と見なす考えがあるとの指摘は、説得力がある。▼「不磨の大典」と見なすのは、一見して尊い考えのようにも思えるが、当該憲法から、実用は考えないという態度にも繋がりやすく、現実に引き直せない難しさがある(政策としての有用性は憲法以外に求めないといけない)▼なお、本書の記載は、国家総動員法の制定から敗戦に至るまでの法律の内容及びその運用に結構な分量が割かれている。2023/09/19
Naoya Sugitani
2
戦前戦後の憲法論と憲法観を検討した研究。さしあたり結論は以下の三点。 ①「理想主義の護憲論が正論として強い権威と正統性をもちながら、現実の憲法運用においては実現可能性が低かった」(p.313) ②「現実主義の立場からとなえられた改憲論が護憲論に対抗しうる論陣を形成できず、そのため憲法改正も実現できなかった」(p.314) ③「現実の憲法運用をになうのは、護憲改憲の両論陣からいかがわしい手段として蔑まれている解釈改憲であったこと」 (同上) 明治憲法の破綻から日本国憲法の定着までの歴史的経緯を描いた労作。2017/08/17