内容説明
一〇〇年から一五〇年のサイクルで日本を襲う、阪神淡路大震災をはるかにこえる巨大地震。中世社会は、巨大地震にどう立ち向かったか。難波浦の津波による被害など未曾有の被害の実態に迫り、現代社会に警鐘を鳴らす。
目次
日記と手紙に記される地震記事―プロローグ
中世の地震と史料
地震と中世社会
一三六一年の地震被害
一四九八年の地震被害―京都・伊勢
一四九八年の地震津波被害―駿河・遠江・紀伊
近世の巨大地震
残存する史料と地震研究―エピローグ
著者等紹介
矢田俊文[ヤタトシフミ]
1954年、鳥取県に生まれる。1982年、大阪市立大学後期博士課程単位取得満期退学。1996年、大阪市立大学博士(文学)。現在、新潟大学人文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
わ!
2
巨大地震と言えば、能登半島地震がリアルな現在であるが、2009年の本なので、話題の中に東日本大震災すらも出てこない。しかも文献史学の本なので、考古学の様な資料もあまり引用されない。タイトルに「中世の〜」とある様に、1096〜99、1036、1498年の地震が中心となるが。付録的に、1605、1707、1854年の地震も取り上げている。面白いのは、これを流れで見ると、日本の情報の歴史が見えてくるところである。情報を書き込む者がいる。それを後世に残す者がいる。この2つの条件が満たされて初めて情報は残される。2024/02/08
なみかはん
2
歴史学の立場から、「確実な史料」を軸に中世の地震被害を復元することを目的とする著書である。「地震」・「津波」を代表とする「災害」を見つめなおす際の歴史学あるいは考古学の役割・機能とそれらの実態についてなど、関心のあるテーマが多かったが、「確実な史料」という言葉に対する筆者なりの定義付けが不明瞭だった上に、筆者自身の考察が少なく、全体的に「薄っぺらい」印象を受けた。2012/02/02
ほるひす
0
中世の地震に関する資料やその研究者について知ることができたので、次はその資料や研究者の本や論文も見てみたいと思う。2014/01/14
モルツー
0
地震の直後に家族の安否確認をし、炊出しをし、余震が続きまくるので夜寝るのは外で。昔の日本人も今と同じことしてた。文献史学における「確かな史料」である文書・日記をメインに、中世の地震について紹介している。東海地方の津波についてのことも書いてある。東日本大震災以前に読んでいたらピンと来なかっただろう津波の記述も、今はリアルに想像できる。現地の津波対策意識に役立つと思う。2012/03/08
卓ちゃん
0
満足な史料が残っていない中世の巨大地震についての研究成果。太平洋側の南海トラフでの巨大地震は、京都や奈良の公家や僧侶にとっては、実体験していないから関心も低く、記録に残されないので、後世に伝わらなかった。それにしても、京都や奈良以外の地域では、そんなに記録が残っていないものなのか。津駅北西の小丹(おに)神社の由緒書きには、明応の地震で海に沈み、その約150年後の大洪水で現在の高台に遷座したことが書かれている。郷土史の本で、過去のことを調べてみよう。2021/03/25