内容説明
近代兵器が登場するまで、日本の武器の主流は刀だと誤信している人が多い。しかし中世の戦においては弓矢が主な武器で、鎧や兜はそれへの備えを第一に作られていた。豊富な実物調査をもとに源平合戦の具体像を読み解く。
目次
日本の武器の実像―序にかえて
日本中世の武器と武具(武器・武具の種類;防御具 ほか)
治承・寿永期以前の弓箭と刀剣(源宛と平良文の合戦;さまざまな合戦 ほか)
治承・寿永期の弓箭と刀剣(治承・寿永期の戦闘研究の現状;真光故実の再検討 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kk
15
源平合戦の頃の合戦戦闘の実態を、当時の武器の実態や使用例などに着目しながら考察。特に、弓矢・太刀・刀の関係を、騎馬戦か徒歩戦かといった視点も交えながら論じていく。著者の提唱する「即物的な歴史学」のアプローチは興味深い。「モノ」の専門家として伝来遺物の実用品としての側面を見つめ続いてきた、プロフェショナルな眼差しに感心。 2021/02/02
bapaksejahtera
10
武器武具と戦闘の実像を中世を文学作品毎に劃期として述べる。更に図版を用いて武具や防具の構成やその使用例などを詳しく説く。武具のうち刀剣については近世から現代にかけてのバイアスから過度に神聖視されて来たとして、むしろ弓箭の軍事的重要性を説く。武具夫々の機能と特質の説明は具体的で目を開かれる。日本馬の特質と世界比較が不足なく説かれ、馬上戦闘の歴史についても解り易い。軍の構成や意識の変化で馬を狙う歩兵の登場は西洋の軍事史と重なって解り易い。総じてこれほど具体的に過不足なく説かれた軍事歴史著作は不肖初めてである。2021/05/01
のれん
10
弓矢における重要性を説いており、刊行の1997年の事を考えれば先進性もあったのかもしれない。ただ個人的にはネットなどで広まっている情報を掘り進めてくれた内容は少ない。 馬が静止した状態で騎射する傾向があったなど、平家物語から記述重視で推考を重ねる。研究の進歩が待たれる、という感想が強まった。この書籍だけでは満足できないが、中世軍事という名の沼に嵌まるにはいいかもしれない。2019/07/07
眉毛ごもら
2
再読。平安〜源平期までの主要武器である弓箭と刀剣、又それを使った合戦についての本である。最初から刀がメインじゃなくて弓がメインやでと教えてくれる親切設計。刀剣ブームの中で念押しされてたので納得。今昔物語と平家物語(類書を含む)から引用。弓箭をメインに甲冑や楯を使って防ぐのがメインで決死部隊の突撃に太刀を使うというのが流れ。甲冑防御力高い。段々と弓箭メインではあるものの矢が尽きると下馬して組討したり、馬から引きずり降ろして頸を掻いたりする戦法も増えてくる。そこらへんが室町の歩兵メインの戦術に繋がるのだろな。2020/12/13
rbyawa
2
f050、日本刀の本を読んでいるので実戦はどんなものかな、と手に取ったんですが、基本的に弓矢と刀は両立だよねー、と言われるとまあそうだろうな、と思わないでもない(しかし弓で残るものは極少だよね、と言われたらそれもごもっとも)。しかし正直なところ教養がなくて中世くらいの勢力争いがよくわからず、とりあえず騎馬兵は太刀で叩き落し、平地にいると弓や短刀で狙われる、という認識でいいかな。弓で馬を狙うことはなかった、とか、馬の進行方向に向かって弓を放つのが基本とか、確かに想像してみるとそのほうが理に適ってる気はする。2015/03/06