内容説明
2010年12月、チュニジアで一人の露天商が焼身自殺を図った。この事件をきっかけに起こった反政府デモは、瞬く間に広がり、時の大統領を亡命にまで追いやった。その波は、エジプトをはじめとしたアラブ諸国全体に及び、いまなお動乱が続いている。このような稀有な政治変動の機会を迎えて、中東政治研究はいま、大きな試練と飛躍の可能性に直面している。本書は、中東諸国で起こっている現象を、政治学の枠組みを用いるとどう分析できるのかを示したものである。特に、従来の比較政治学では必ずしも十分に議論されてこなかった、公的制度と非公的制度の関係(第1部)、宗派・部族といった伝統的社会紐帯(第2部)、政治制度外で展開される社会運動(第3部)、アイデンティティや運動の越境性と国際政治(第4部)について、中東の事例を通して、説明する。
目次
中東政治学―地域研究と比較政治の架橋
第1部 誰が支配しているのか―体制維持のための統治メカニズム(エジプト権威主義体制の再考―ムバーラク政権崩壊の要因;シリアにおける権威主義体制のしくみ―政治構造の分析を中心に;サウディアラビアの体制内権力)
第2部 どの対立を調整するのか―民主化と伝統的社会紐帯(イエメンの民主化と部族社会―変化の中の伝統;レバノンにおける多極共存型民主主義―2005年「杉の木革命」による民主化とその停帯;外部介入によるイラクの民主化;アフガニスタンにおける統合と部族社会)
第3部 どこで衝突しているのか―路上抗議運動の意味と展開(イランにおける抗議運動―政治空間の変容と公的主張;エジプト政治の民主化と社会運動―「1月25日革命」とムバーラク政権の崩壊;パレスチナにおける抵抗運動の変容)
第4部 誰が参加できるのか―国境を超えるアイデンティティと国際政治(パレスチナ問題はなぜ国際的広がりをもつのか―アラブ、イスラーム諸国およびアメリカとのつながり;中東におけるトランスナショナルな関係―国民意識への挑戦か喚起か;湾岸諸国における移民労働者;中東における「介入」の位相)
著者等紹介
酒井啓子[サカイケイコ]
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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